第4話 ドナドナ(11月28日加筆修正)

翌日

目が覚めたライト達は、いつもの黒パンと樽の水を与えられる。

それを食べた後、昨日とは打って変わり、奴隷用の檻馬車に詰め込まれると馬車はゆっくりと動き出す。

ちなみに、馬車に乗るまでの間にヴァロの奴や下っ端の奴らが近付いてきた為、スキルをコピーしまくってやったライトである。


固有スキル:コピーLV2

剣術LV3(NEW)・槍術LV2(NEW)・格闘LV2(NEW)

盾術LV3(NEW)・鑑定LV6・収納LV4・気配察知

身体強化LV3・料理(NEW)・採取LV1(NEW)

水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール

生活魔法:クリーン、ドライ、ライト(NEW)、ウォーター(NEW)


意外とヴァロと言う盗賊の頭が一番スキルが高かった。

「盗賊の癖に、無駄にスキル高すぎるだろ。」そう思うライトだが、それよりも何よりも生活魔法のウォーターがコピー出来たのが嬉しい。もしここから逃げる事が出来たら、飲み水に困らないからだ。後、暗い所を照らすライトも逃走するには有難い。


そんなライト達は、現在馬車に揺られて街道では無い場所を移動してる。

何故街道を使わないんだろ?と思ったが、よくよく考えればライト達は違法に連れ去られた子供達だ。正々堂々と街道を走れる訳など無い。

そんな訳で、道なきデコボコの道を走る事数時間後の日が暮れかかって来た頃、馬車が止まる。今日一晩を過ごす場所に到着したようだ。

ライト達が檻から出される中、シモの手下達が手際よくテントを建てる。

昨晩押し込められていたテントが建つと、檻の中で垂れ流しだった子供達はクリーンを掛けられテントへと移動させられる。

そして毎度お馴染みの黒パンと樽水を与えられ人心地ついた後、一人ずつ子供が連れ出されていく。


(何をされるんだろ?)


今日は3人連れて行かれたが、戻って来た時に見た感じだと別段殴られたとか何かされたと言う感じでは無かった。

連れて行かれた子に何をされたのか聞きたい気もしたが、精神的に疲れ果てていたライトは何も行動を起こす事も無く眠りについた。

その翌日も同じ事が繰り返えされる。

何度か逃げ出そうと気配を探ったけど、護衛の男達が厳重に見張ってるので中々タイミングが見つからない。ライト一人なら逃げれるかもしれないが、せめて弟とメイラはだけでも助け出したい。

そう思っていた矢先、とうとうライトの番がやって来る。

男が二人やって来てライトを挟むように立つと、一際豪華なテントへと連れられて行かれる。

テントに入ると目の前にはシモが座っており、テーブルの上には何やらインク壺とペンが置かれている。


「背中をこちらに向けて座りなさい。」


ライトは配下の男に無理矢理椅子に座らされる。そして、椅子に座ると同時に服を捲り上げられた。


「さて、始めますかね。」


シモがそう言うと、背中にひんやりとした感触がし始める。

この数日で連れ去られた子供達は、この男に奴隷としての手続きをされていた事にようやく気付く。


(このままじゃ、マズい!奴隷にさせられる!)


ライトは咄嗟に「コピー」と呟く。

そのタイミングと共に、生暖かい感触がしてシモの作業が終わりライトの奴隷契約が完了してしまう。


「はい終了です。別の子を連れて来なさい。」


こうして目出度くライトはシモの奴隷となった。

契約の効力なのか、スキルも魔法も使えない。そう、逃げる事が出来なくなった訳だ。ライトは絶望し生きる気力が無くなった。


それから2日後。

ライト達は何処かの街へと連れて行かれる。

結局街道を進まなかったのは子供達に奴隷契約を施す為だったらしく、奴隷契約を施した後は速やかに街へと入った。

そしてライト達は、シモの店だろう建物の地下に居る。

ここには大人の奴隷や獣人などの他種族の奴隷も監禁される場所の様で、人一人が丸まって横になれるくらいの檻に一人ずつ入れられている。

そして、連れて来られた子供達は、大人よりも小さな檻に一人ずつ入れられた。



どれだけの日が経ったのだろう。

暗い地下牢の様な所に居るから、時間の感覚が全く無い。

毎日毎日、悲鳴や怒鳴り声、卑猥な言葉が聞こえてくる。

こいつらにとっては、ライト達の様な小さな男の子でも性の対象のようだ。

奴隷の男達から発せられる汚い言葉で、精神が破壊されそうだ。

そして暫くすると、村から一緒に攫われて来た子達が一人、また一人と檻から消えて行く。多分、誰かに買われたんだろう。

つい先日、弟のラシムがこの場から連れて行かれた。そして今日、幼馴染のメイラが連れて行かれた。

どうやら有用なスキル持ちか、まだスキルを授かってない9歳以下の子達が優先的に売れて行くようだ。

しかし、ライトのスキルはコピー。誰もそれが何なのか分からないのだろう。

事実、シモに命じられて鑑定する為の板に手を翳してみたところ、コピースキルどころかコピーすら表示されなかった。

要は、見た感じ『スキルを持ってない役立たずの子供』と言う事だ。そんな役立たずの子供を買うような、酔狂な大人は居ないのだろう。

その後も子供達は誰かに買われて行き、とうとうライトだけがこの暗い闇の中に取り残される。



それから更に時間が経った。


「おい、出ろ!」


突然そう言われて檻の扉が開いた。


「さっさと出ろ!」


ライトの右腕を掴み、乱暴に引き摺り出される。


「さっさと歩け!」


男に無理矢理立たされて、後ろから背中を小突かれる。

ここに連れて来られて、何日・・・いや、何十日経ったのか全く分からない。

唯一分かるのは、満足な食事も与えられず狭い檻の中で丸まって横になっているだけなので、身体はやせ細り筋力も衰えている事くらいだ。

それでも何とか自力で立ち、そして歩き始める。


「入れ。」


ライトは男に言われるがまま、部屋の中へと入る。


部屋の中にはシモが居た。

そして、シモの前にはニヤニヤした感じの悪い男と、その感じの悪い男に媚びる様に撓垂しなだれ掛かる二人の女がソファーに座っている。


「ブラス様のご要望の奴隷はこれのみなんですよ。仕入れて既に半年以上経ちますが、スキルを一つも持ってない為一向に買い手が付きませんで。仕入れを考えると本来金貨1枚は頂きたい所ですが、このまま売れ残りますと廃棄に回さないといけませんし銀貨20枚で如何ですか?」


シモの話しぶりからすると、ここに連れて来られて既に半年以上経ってるようだ。


「スキルも持ってない役立たずの廃棄品に銀貨20枚?高けーよ!銀貨10枚なら買ってやる。」


お金を持った事の無いライトからしてみると、銀貨20枚が高いのか安いのか全く分からない。ただ、このまま売れ残ると廃棄処分される事だけは理解出来た。

そして、これが奴隷から逃れる最後のチャンスだと言う事も。


「ん~。分かりました。御贔屓にして頂いておりますブラス様です。銀貨10枚でお売りいたしましょう!ただし、手数料は別料金でお願いしますね?」


「仕方ねえな~。」


少しでも元を取り戻したいシモと、少しでも安く買いたいブラスの間で一応の折り合いが着いたようだ。

これでもう少し生き永らえる事が出来る。


「では、早速手続きをしましょう。」


シモがそう言うと、ライトを連れて来た男に強引に服を捲り上げられ、無理矢理背中をシモの方へと向けさせられる。


「跪け。」


ライトはその場に膝立ちで跪く。

それから何やら作業をし、背中に生暖かい感触がしたところでシモが口を開く。


「おい、下がって支度しろ!」


シモの命令で部下はライトを連れて部屋を出る。

部屋を出た後は、地下に戻る事無く別の部屋へと連れて行かれる。

そして、部屋に入ると着ている服を脱がされクリーンを掛けられる。

身体が綺麗になった所で、貫頭衣と呼ばれる(麻袋の底と横を丸く穴を開けた感じの)服を着せられ再度先程の部屋へと連れて行かれた。




そして今、何故か森の中を歩いている。

ライトを買ったブラスと言うクズ男。どこぞの貴族の三男で羽振りが良く、Cランクの冒険者らしい。奴隷を囮に使って依頼をしてるクズな野郎だそうだ。

一緒にパーティーを組んでいるのは魔法使いのアデラと弓使いのダナと言うクズ女だ。

何故ライトがそれを知ってるか?

さっきからこの三人がライトの後ろで、ペチャクチャと喋ってるから全部聞こえて来ているからだ。

「やれ○○の討伐の際は囮の奴隷がこんな死に方をした」だの、「○○の討伐の際に買った奴隷は命乞いして来たけど魔物の群れの中に投げ込んでやった」だの笑いながら話している。

聞いてて胸糞が悪くなるライト。

ちなみにこいつらの中で、ライトは「スキルを持たない役立たず」が確定らしい。

何故なら、この三人に買われ外に出た時から、ライトのスキルが使えるようになってるからだ。

何故そうなったかと言うと、先ず最初にシモとの契約をした際は、攫われた子供全員が同じ条件で奴隷契約をさせられていたので、ライトもスキルが使用出来なかった。

しかしこの男との契約の際に、「スキルを持ってない」と言う事でその項目を省いた形で契約をしてしまったのだ。そのお陰で現在スキルが使用可能になっている訳だ。

そうなればやる事は一つしかない。既にこいつらのスキルはコピー済みだ。


固有スキル:コピーLV3

派生スキル:ペースト

剣術LV4(NEW)・槍術LV2・格闘LV2・弓術LV3(NEW)

棒術LV2(NEW)・盾術LV3・鑑定LV6・収納LV4

気配察知・気配遮断(NEW)・身体強化LV4(NEW)

俊足LV2(NEW)・魔力操作(NEW)・調教LV3(NEW)

精巧LV:2(NEW)料理・採取LV1・奴隷術LV5(NEW)・乗馬(NEW)

操車術(NEW)・帝王学LV2(NEW)・算術(NEW)

商才(NEW)

火魔法LV3(NEW)

LV1:ファイヤーボール、ファイヤーアロー

LV2:ファイヤーボム、ファイヤーウォール、

LV3:フレイムアロー、フレイムジャベリン

水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール

生活魔法:クリーン、ドライ、ライト、ウォーター


こいつらにコピーを使用したからなのか分からないが、コピーレベルが3に上がってた。派生スキルと言うのが追加されたが、あまり一点を見ていると怪しまれるので確認は後にする事に。

そして、流石は冒険者と言った所か剣術レベルが上書きされた。

クズ男が貴族だからだろうが、帝王学や算術、商才(も?)が増えていた。

弓術と精巧はダナと言うクズ女。棒術と火魔法はアデラと言うクズ女のスキルだろう。後、魔物を探す為なのか、肩に鳥が止まっていたのを見たので、調教スキルはダナのスキルだろう。

本人を鑑定したいがあまりジロジロと見る訳にも行かず、それ以外のスキルは誰が誰のスキルか分からない。


ま、そんな事はどうでもいいが、現在ライトは木の陰に身を潜めている。

その理由は、目の前にクズ男が受けた依頼の魔物の群れが居るからだ。

魔物の名前はオーク五匹とオークファイターが一匹だ。

このクズ達の話を聞く限りだと、オークファイターはDランクの魔物でオークがEランクの魔物だそうだ。

ただ、これは単独での話で、今回の場合だとCランク以上の冒険者でないと倒せないらしい。そんな事言われても良く分からないが。


そしてここでライトの出番と言う訳だ。


「おいお前、あいつらの気を引いて来い!」


「え?どういう事ですか?」


ま、何となく言いたい事は分かるのだが、一応念の為に再確認してみる。

奴隷紋からの痛みが来てないので、これくらいの事を聞くのは大丈夫なんだろう。


「そのままの意味だよ!お前があいつらの気を引いてる内に、俺達があいつらを倒す!精々逃げ回って俺達が倒しやすい様にしてくれ。分かったら、早く行け!」


クズ男に背中を蹴られたライトは、蹴り飛ばされた衝撃で派手に音を立てながら地面に倒れ込む。

そんなライトをオーク共が発見する。そりゃ当たり前だ。

ライトを見つけたオーク共は、武器を振り上げライト目掛けて走り込んで来る。

それを見たライトは、恐怖感に襲われながらもすぐさま立ち上がり、オークの反対方向へ向けて走り出す。

そう、身体強化を使いクズ男の方に向かって。


「バ、バカ!こっち来んじゃねぇ!」


その言葉と共に、ライトの全身に痛みが走る。命令違反らしい。

しかし、今はそれどころじゃない。

気力を振り絞り、ライトはクズ男を抜き去ると、すぐさま気配遮断を使う。

クズ男はライトの気配が消えた事で驚くが、直ぐ目の前にオーク共が迫って来ている為剣を抜き放つ。


その頃二人のクズ女は、ライトがオーク共に甚振られてる間に背後から攻撃をするつもりなのだろう、クズ男の右手側からオーク共の背後に移動していた。

しかし、ライトが突然クズ男の方へ走り出したが為に、不意を突かれて行動が遅れてしまう。その間にライトとオーク共がクズ男へと接近。ライトが消え、オークとクズ男の乱戦となる。

クズ女二人が正気に戻り、そしてクズ男を援護する為にオークとの距離を縮めて戦い始める。

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