第3話 やっと理解した(11/28加筆修正)

「・・・きて。」


誰かが身体を揺すっている。


「ライト・・・く起きて!」


誰かが俺の名前を呼んでいる。





「どけっ!さっさと起きろやこのガキが!」


脇腹に走る痛みで目が覚める。


「さっさと立て!もう少ししたら出発だ!」


ライトを蹴り飛ばした男は、ブツクサと文句を言いながら建物の外へと出て行く。


「ライト!大丈夫!?」


脇腹を押さえ、呻くライトにメイラが駆け寄る。


「ゲフッ・・・。ああ、大丈夫。メイラおはよう。」


ライトはは咳き込みながらも何とか立ち上がり、メイラに大丈夫だと告げる。


周りを見渡せば既に他の子供達は全員起きており、村から奪って来た物であろう黒パンを齧り樽に入っている水をがぶ飲みしていた。

ライトもメイラから黒パンを受け取ると、それを齧り水を飲む。


それから暫くすると、先程ライトを蹴飛ばした男がやって来て外に出ろと言い放つ。

ライト達が言われるがまま外へと出ると、盗賊の頭が荷馬車に踏ん反り返っていた。

そして下っ端だろう男がライト達の元へとやって来ると、子供達を二列に並ばせ腰を縄で縛って繋げて行く。


「出発だ!」


子供達を縛り終えると、盗賊達は昨日通った道とは反対方向へと向かって進み始める。


ライト達は昼も食わせて貰えず、一杯の水だけを与えられ只管林の中を歩く。

そんな中、一つだけ最悪な事がある。

昨日もそうだったのだが、生理現象が起こっても歩みが止まる事が無いのだ。

要は、垂れ流し状態だ。

誰かが足を止めれば必然とぶつかり雪崩式に倒れる。

単に倒れるだけならいいが、地面には垂れ流されたモノがある。

運が悪いと、顔面から突っ込んでしまうのだ。

顔面から突っ込むくらいなら、まだ踏んだ方がマシ。とは言え、男はまだいいが女の子は可哀そうではある。

メイラなんて、涙流しながら「見ないで!踏まないで!」って目で訴えて来る。

「そんな事言ったって、俺の前がメイラなんだから仕方ないだろ!」そう心の中で思いながらもライトはただただ歩く。


そんな強行軍の末、日が傾く前には林を抜ける事が出来た。

林を抜けた所には身成りの良い小太り三段顎の男と鎧に身を包み武器を持った男達が待っていた。

馬車が止まると、盗賊の頭は荷馬車から飛び降りて歩き出す。


「これはこれはヴァロ隊長。お早いお着きで。」


「その名を呼ぶなと言っただろ。」


ヴァロと呼ばれた盗賊の頭は、物凄い不機嫌な顔で小太りの男を睨む。


「おっと失礼しました。それで、買取の品はどちらですか?」


小太りの男は子供達の方をチラチラと見ながらヴァロに確認する。


「奴隷はあの14人だ。アジトに4人程女が居るが、あれは遊び尽くしたら売る。後は金目の物が馬車に積んである。今晩の内に確認しておけ。」


ヴァロはそう言うと、何やら手下に命じる。


「畏まりました。では、先ずは奴隷の方から確認しましょう。」


捉えられたライト達は、小太りの男に連れられて大きなテントへ向かう事に。


その晩は小太りの男に連れられて入ったテントの中で休む事に。

ちなみにこの小太りの男、奴隷商人らしく名前はシモ。

人攫いの様な事をしているのだから、真っ当な商人では無い。

しかしこの男、商品となる子供達には何故か優しく、垂れ流しで汚れた身体(単に臭かっただけかもしれないが)を部下の男に命じて綺麗にしてくれた。

なにやら魔法を使ったようだ。命令された男は、「クリーン」と言っていた。

男がそう唱えると、悪臭漂う子供達の身体が綺麗サッパリとなる。

「便利な魔法だな。俺にもこんな魔法が使えればいいのに。」そう思うライトであった。


綺麗になったライト達は、部下の男から黒パンを受け取り貪り食うと樽の中の水をガブ飲みする。育ち盛りの子供達が、黒パン一つで満腹になる筈も無い。なので、水で腹を満たすしか無いのだ。

腹が膨れた後は、テントの中で各自が地面に横になる。昨日と同様に灯りすら無く真っ暗なテントの中だ。やる事も無い。流石に強行軍で疲れたのか、ライト以外の皆は既に寝息を立てている。

それを横目にライトはどうにかこの状態から脱する事が出来ないか考える。


(どうにかしないとこのまま奴隷になってしまう。)


既にどうしようも無いのかもしれない。

しかし、何か方法があるかもしれない。


(神父様の使ってた水晶。あれが使えればな~。)


そんな非現実的な事を考える。既に神父様はあいつらに殺されてる筈だ。

なので殺された後に、神父の収納に入っている物がどうなるかなんて全く分からない。


「確か神父様の持っていた水晶は『の水晶』って言うんだよな。」


たまたま目の前で横になるメイラを見ながら想いに耽っていたのだが、ふと声に出して呟いていた。

そしてその瞬間、ライトの目の前に薄っすらと発光する透明な板の様な物が現れる。


「うぉ!」


それを見たライトは、驚きのあまりつい大きな声を出してしまう。

その声に気付いた見張りの男二人が、テントの中を覗く。


「どうした!?何かあったのか?」


ライトは慌てた。目の前には透明な板が光っている。普通に考えれば、どう考えてもこの光はバレるだろう。


「い、いえ。夢を見て驚いただけで・・・。」


ライトは咄嗟に光る板を背にそう口にする。


「そうか。明日は朝が早い。早く休め。」


見張りの男達は光る板に気付かなかったのか、そう言うと入口の布を閉める。


(ふ~。危なかった。)


冷や汗を掻きながらもホッと溜息を吐く。


(さっきのは何だったんだ?薄っすらと光ってたけど、見張りの男には見えて無かったみたいだが・・・。)


ライトは再度確かめる為に、メイラを見ながらもう一度さっき呟いた言葉を言ってみる。


「確か神父様の持っていた水晶は『の水晶』って言うんだよな。」


すると、薄っすらと発光する透明な板が再びライトの目の前に現れる。


前 : メイラ

年齢 : 10歳

レベル: 1

経験値: 17%/100%

体力 : 10

魔力 : 15

筋力 : 6

精神力: 9

瞬発力: 5

スキル:

水魔法

LV1:キュアウォーター


板の内容は、やはりメイラの情報だった。

メイラから視線を外す。すると今まで見えていたメイラの情報はスッと目の前から消える。


(なんでメイラの情報が見れるんだ?つか、メイラの情報が見れると言う事は、もしかして俺の情報も見れるのか?)


「もしかして?」そう思い、自分の掌を見ながら小さな声で「確か神父様の持っていた水晶は『の水晶』って言うんだよな。」と呟く。

すると、ライトの目の前にはやはり薄っすらと発光する板が現れる。


名前 : ライト

年齢 : 10歳

レベル: 1

経験値: 24%/100%

体力 : 12

魔力 : 11

筋力 : 8

精神力: 10

瞬発力: 8

スキル:


固有スキル:

▼コピーLV2(UP)

鑑定LV6(NEW)・収納LV4(NEW)

水魔法LV3(NEW)

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール


(見れた!しかし、メイラの情報とちょっと違うよな?)


ライトは違和感を覚え、再びメイラに向かって「確か神父様の持っていた水晶は『の水晶』って言うんだよな。」と呟く。


名前 : メイラ

年齢 : 10歳

レベル: 1

経験値: 17%/100%

体力 : 10

魔力 : 15

筋力 : 6

精神力: 9

瞬発力: 5

スキル:

水魔法

LV1:キュアウォーター


(あ!?メイラに固有スキルって項目が無い・・・。)


そう、ライトには『固有スキル』があるが、メイラには無かったのだ。

違和感の正体に気が付いたライトは、再び自分の掌を見ながら例の文言を呟く。


名前 : ライト

年齢 : 10歳

レベル: 1

経験値: 24%/100%

体力 : 12

魔力 : 11

筋力 : 8

精神力: 10

瞬発力: 8

スキル:


固有スキル:

▼コピーLV2

鑑定LV6・収納LV4

水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール


色々ツッコミたい部分はあるが、先ずは自らが授かったスキルを確認したいが、どうやって確認するか一頻り悩む。


(これどうやって確認すればいいんだろうか・・・。この▼を押せばいいのかな?)


俺は透明な板の▼の部分を指で押してみる。

しかし、指は透明な板を突き抜けてしまう。


(ん~ダメか。もしかして、念じてみるとか?)


そう思ったライトは、「説明開け!」「説明見せて!」と念じてみる。

すると説明が出た。


コピーLV2

スキル使用者が触れた者(物)若しくはスキル使用者の半径1m以内に入る者(物)からスキルをコピーし、コピースキルとして使用する事が出来る。

既にコピー済の同じスキルをコピーした場合、高いスキルレベルに置き換わる。魔法をコピーした場合、コピー元が使用出来るスペルもコピーされ使用可能になる。

発動する際はスキル名を言わなければならず、念じるだけでは発動しない。

※固有スキルはコピー出来ない。

※コピースキルのレベルは上がらない。

※同じ対象者には一度しか使えない。


(なるほど。コピーを使えば他人のスキルが使えるようになるんだな。)


と、なるとだ。その他諸々増えているスキルのコピー出処に、凡その見当が付いてくる。


(多分、鑑定は神父様が持って来た水晶をコピーしてしまったのだろう。)


説明には、『触れた者(物)』と書いてある。

確実にライトの手が水晶に触れていたのだから、これは確実だろう。

あの時の途方もない力はこれだったのかもしれない。

そして問題は収納と水魔法だ。

多分これも神父様のスキルをコピーしたと思われる。


(あの時水晶には俺と神父様が触れていた。説明を見る限り『触れた者(物)』か『半径1m以内に入る者(物)』がコピーの対象となっている。でも、もしあの時に『半径1m以内』と言う条件が入っていれば、ザックの剣術もコピーされてる筈だよな?)


あの時ザックもメイラもライトの真横に立っていた。もし『半径1m以内に入る者(物)』が対象であればコピースキルに『剣術』が無いとおかしい。しかし、コピースキルの中に『剣術』は無い。

と言う事は、その時点では『触れた者(物)』しか対象になっていなかったと思われる。

ライトの予想は正しく、最初は『触れた者(物)』だけが対象だった。その後レベルが上がったが故に『半径1m以内に入っている者(物)』が追加されたのだろう。


(どんな仕組みでコピーのレベルが上がったのかは分からないけど、神父様と水晶のスキルをコピーしたから上がった可能性があると言うのだけは理解した。多分、何度も使ってれば勝手にレベルが上がるんだろうな。それに、レベルが上がれば効果が追加されると言うのもわかった。)


現在コピーのレベルは2になっている。

何をすればコピーレベルが上がるのかは不明だが、使い続ければ少しずつだが上がって行くのだろう。


(初めはクソスキルだとばかり思って神様に文句を言ったけど、中々どうして使えるスキルだったと言う訳か。)


ライトは神に感謝の祈りを捧げた後、コピーしたスキルを詳しく調べた。


・鑑定

指定した者(物)の情報を見る事が出来る。レベルが上がると見える情報量も増える。

※隠蔽されていると見れない。


・収納

専用の収納空間を使用する事が出来る。

収納の容量はレベルが上がる事で増える。

収納の中は時間経過が止まる為、生き物を入れる事は出来ない。

使用者が死亡した場合は、収納内の物はその場に吐き出される。


一通りスキルを調べた後、試しに見張りの男のスキルをコピーしてみる事に。

音を立てない様にテント入口まで移動し、ある程度の所で「コピー」と呟く。

すると、以前よりかは軽い感じで身体の中に力が入り込んで来る。

数秒して身体の違和感が消えた所で、先程の場所へと戻り再度自らに鑑定を使用してみる。


固有スキル:▼コピーLV2

剣術LV2(NEW)・槍術LV2(NEW)・格闘LV1(NEW)

鑑定LV6・収納LV4・気配察知(NEW)・身体強化LV2(NEW)

水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール

生活魔法(NEW):クリーン、ドライ


結果上々でスキルをコピーする事が出来た。


(この調子で明日も色んな奴のスキルをコピーすれば、何とか脱出出来るかもしれれないな。)


ようやく自分のスキルの使い方を理解したライトは満足げに頷くと、明日の為にとその場で横になり身体を休めた。


-・-・-・-・-・-・-・-・-


コピーLV1

スキル使用者が触れた者(物)からスキルをコピーし、コピースキルとして使用する事が出来る。既にコピー済の同じスキルをコピーした場合、高いスキルレベルに置き換わる。

魔法をコピーした場合、コピー元が使用出来るスペルもコピーされ使用可能になる。

発動する際はスキル名を言わなければならず、念じるだけでは発動しない。

※固有スキルはコピー出来ない。

※コピースキルのレベルは上がらない。

※同じ対象者には一度しか使えない

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