第150話:付与魔法使いは協力を取り付ける

 言葉遊びのようにも感じるが、結果的には確かにそうだ。


「……そういう捉え方もあるのか」


「はい。なので、アルスが気になさる必要はないのです」


 セリアのおかげで、少し気持ちが晴れた気がする。


 と、そこにニーナとマリアが俺の前までやってきた。


「アルスさん、改めてありがとうございました!」


「私たちを助けていただいただけに留まらず、ママまで! アルスさんは私たちの恩人です!」


 二人の笑顔を見ていると、俺が気にしていたことなど、瑣末なことでしかなかったと感じる。


 ここは素直に感謝の気持ちを受け取っておこう。


「どういたしまして」


 さて。これでエルフの里にやってきた一番の目的は達成だな。


 できれば、魔王の居場所に関することや、魔法書の情報を集められればいいのだが……。


 などと思っていたところ。


「アルス君。何かお礼をさせてもらえないだろうか?」


 ハリーさんが声をかけてきた。


「いえ、お礼なんてそんな……あっ、できれば数日泊めてもらえると助かります」


「それはお礼のうちに入らんだろう」


 う〜ん、そうは言われても、俺としてはもともとが恩返しのつもりだった。気にしないでもらえると助かるのだが……難しそうだな。


 と、そこにニーナが助け舟を出してくれた。


「パパ、アルスさんたちは魔王と魔法書のことを知りたいって言ってたよ。これってなんとかならないかな?」


 道中では、ニーナとマリアの二人にも俺たちの旅の目的を伝えていた。


 どうやらそれを覚えてくれていたらしい。


「ふむ、魔王に、魔法書か。ソフィア様、書庫に彼らの助けになれるような本に何か覚えはありませんか?」


「魔法書は見当も付かんが、魔王に関することはあったような……なかったような……じゃな。いや、昔読んだ書物にそれらしいことが書かれていたような気がするのじゃ」


「彼らへのせめてもの礼として、写本を贈呈できればと思っています。ソフィア様、お力を貸していただけませんか?」


「うむ、よかろう。ワシも里を代表して労に報いねばと思っていたところじゃ」


「ありがとうございます……!」


 なんだか、ニーナの一言のおかげで思っていた以上にスムーズに事が進んでいくな……。情報は自力で集めるしかないと思っていたので、手を借りられるのはめちゃくちゃありがたい。


「それはそれとして、さすがに本を探すだけでも一晩はかかるのじゃ。しばらく滞在するんじゃし、アルスたちに里の案内をしなくてはな」


「はい! ソフィアおばあちゃん、その役私がやります!」


「私も!」


 ニーナとマリアが勢いよく挙手した。


「では、二人に里の紹介をしてもらおうかの。ワシはゆっくりついていくわい」


「私たちだけで大丈夫ですよ?」


 マリアが暗にソフィアがついてくる必要はないと説明するが、ソフィアは首を横に振った。


「そんなことは分かっておる。でも、久しぶりの客人じゃし、ワシもついていきたいのじゃ!」


 駄々をこねるソフィアに、ニーナたちは少し驚いた様子。


「わ、わかりました。では、一緒にお願いします!」


 ということで、半ば強引にソフィアも一緒になって里を案内してくれることになった。

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