追放された付与魔法使いの成り上がり 〜勇者パーティを陰から支えていたと知らなかったので戻って来い?【剣聖】と【賢者】の美少女たちに囲まれて幸せなので戻りません〜
第147話:付与魔法使いは不足の事態を想定する
第147話:付与魔法使いは不足の事態を想定する
確かに、望んだ効果が得られなかったのは偽物だから……と考えると納得できる。だが、俺は直感的に違うと感じた。
「さすがにそれはないな。その辺の露天商が売っていた薬ならその可能性も否定できないが、俺たちが買ったのは王宮にも卸している由緒正しい薬屋だからな」
信用で飯を食っている相手から買ったというのが一点。とはいえ、人間が管理する以上は意図せずとも誤って別の薬が混入した可能性は否定できない。だが、そうだとしてもおかしな点がある。
「それに、偽物だとしたらこの薬の正体がわからない。間違った薬だとして、これだけの量を投与すれば何か変化があってもおかしくないと思うんだ」
どんな薬にも用量用法がある。間違った使い方でも、必ずしも直ちに悪化するわけではないが、少なくとも今のところ意図していない作用は起きていない。
「アルスの言うことは尤もじゃ。ワシも本気で真贋を疑っているわけではないが、可能性は検討する必要があると思っただけじゃからそう熱くなるでない」
「……そうだな。それで、二つ目は?」
「単に薬の量が足りていないということじゃ。ワシはこっちの可能性が高いと思っておる」
「量?」
「これを見るのじゃ」
ソフィアは、そう言いながらリザリーさんをうつ伏せにさせた。そして、背中を露出させる。
「……っ!」
「ひっ!」
「な、なにこれ……」
リザリーさんの背中を見た俺たちは、思わず顔を顰めた。
それぞれ、俺、セリア、ユキナの反応である。
リザリーさんの背中には、痛々しい傷跡があった。五本指で引っ掻いたような鋭く大きな傷。傷自体は既に塞がっているが、跡を見ただけでもどれだけ大きな怪我だったのかが嫌でもわかる。
「これは……?」
俺が恐る恐る尋ねると、ハリーさんが答えてくれた。
「森で魔物に襲われたのだ。命からがら戻って里には戻って来たのだが、それから程なくして『魔風症』を発症してしまってな。この時の魔物が原因なのは間違いない」
「な、なるほど……」
「ただ、リザリーを襲った魔物は未だに見つかっていないのだ」
「見つかってない⁉︎」
リザリーさん自身の魔力許容量がどの程度なのか分からないとはいえ、『魔風症』を引き起こすレベルの魔物となるとかなり強力なことは確か。
すぐ近くに潜んでいるかもしれないと考えると、かなり危険な状態だな。
「ああ。だから、どれだけの魔力を浴びたのかが分からない。ソフィア様は、一本の薬で解毒できる量を超えた魔力を浴びたのではないかと考えているのだと思う」
なるほどな。
確かに、普通程度の『魔風症』なら一本の薬で十分だったが、魔物から浴びた魔力量によって必要量は変わってくる。ただ単に量が足りなかったとすると話は早い。
「ということは……あっ!」
「アルス!」
セリアとユキナが俺に声を掛けてきた。
もちろん、俺も分かっている。実は、こんなこともあろうかと対策していたのだ。
「それなら、これを使ってくれ」
俺は、言いながらアイテムスロットから余分に買っておいた『魔風症』の薬を取り出した。
「なっ⁉︎ もう一本⁉︎」
「じゅ、準備がいいんじゃの……!」
ハリーさんとソフィアは、虚をつかれたようで、かなり驚いていた。
「不足の事態を想定して念の為にもう一本買っていたんだ」
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