第四章
第138話:付与魔法使いは強行する
「え、二十キロじゃ着かないのか⁉︎」
王都を出発した俺たち。
ニーナとマリアからエルフの里までのルートを相談したところ、地図を見て計画していたルートではエルフの里に辿り着けないと告げられた。
「道自体はあるんですけど、誰も通れません。ね、マリア」
「さすがにね。っていうか、道も今はボロボロで多分使えないよね……」
俺が王都で入手した周辺地図では、王都からエルフの里へ繋がる直線のルートがあった。
これを見ていたので、それほど遠くない距離だと思っていたのだが……どうやら、ニーナとマリアの二人曰く、これは使えない道ということらしい。
「通れないっていうのは、どういうことなんだ?」
道があるのに使えない……どころか、整備もされていないというのはよくわからない。
確かに王都ではエルフを奴隷にしてしまったりという文化があるので、エルフの里側が距離を取るために通行不可にしたということか……?
「この辺りは、常に魔力災害が起きるようになったんです」
ニーナが答えてくれた。
「魔力災害っていうと……自然魔力が勝手に魔法を発動するっていうやつだよな?」
ベルガルム村でも、村にゲリラダンジョンが発生する直前に、村中の食料が腐る事件があったことを思い出す。
「そうです。一ヶ月ほど前からなのですが、道中で魔力災害が起こるようになってしまって……。地面が凍ってしまうほど寒くなったかと思えば、干からびるくらい暑くなってしまったり。とても人やエルフが歩ける環境ではなくなってしまいました」
「一ヶ月⁉︎」
魔力災害の内容も興味深かったが、それ以上にこの変化がたった一ヶ月前に起こったということに驚いた。
それなら、地図から従来の道が消えていたのも納得……か。
「はい。なので、私とマリアも王都に来るまで一週間くらいかかりました」
「……なるほどな」
ニーナたちが話し終えると、一緒に話を聞いていたセリアとユキナが近寄ってきた。
「アルス、一度街に戻りませんか?」
「私も同感。一刻を争うというわけではないし、片道一週間となるともう少しちゃんと備えをしておきたいわ」
確かに、一週間かかるのなら一度戻るべきかもしれない。
もちろん俺は『アイテムスロット』を使えるので、このまま出発しても十分な食料や消耗品は揃えてある。だが、旅の途中では何があるかわからないからな。
——と言っても、それは『本当に一週間かかるなら』の話。
「いや、このまま行こう。話を聞いた限り、そのくらいなら問題ない」
「しょ、正気ですか⁉︎」
「アルスは丈夫かもしれないけど、ニーナとマリアも連れて行くのよ⁉︎」
セリアとユキナが物凄い勢いでツッコミを入れてきた。
だが、俺も何も根拠なしに提案したわけではない。
「気温の変化は俺の付与魔法でどうにでもなる。むしろ、そんな環境なら魔物も出てこないはずだ。都合がいい」
————————————————————
コミカライズ2巻が今日発売になりました!
ぜひ読んでみてください!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます