第136話:付与魔法使いは出発する

 ◇


 あれから十日後の昼。


「それにしても、まさかまた俺たち勇者になっちまうなんてな……。今でも信じられねえよ」


 フロイス国王はナルドたち旧勇者をそっくりそのまま新勇者とするよう取り決め、正式にメイル王国所有の勇者にナルドたち七人を任命したのだった。


「この前までずっと勇者やってただろ? 妥当な人選だと思うぞ」


「まあ、それはそうなんだが。なんか変な感じでな。まあ、次期に慣れるとは思うが」


 これから、俺たち『インフィニティ』はニーナとマリアを連れてエルフの里へ向かう。


 ナルドたち勇者パーティは王都に滞在するらしい。


「これで、本当のお別れだな」


 名残惜しそうにナルドが呟く。


 言葉には出していないが、他の六人の勇者もどこか寂しそうだった。


「まあ、またいつか会うことになるだろ。パーティは違っても、最終的な目標は似たようなものだからな」


 俺たちの目標は、どちらも魔王に関するもの。


 プロセスは異なっても、生きていればそう遠くないうちに再会することになる。


「まあ。それは確かにそうだな。でも、しばらく会えなくなるのもまた事実だ。元気でな」


「ああ。そっちこそな」


 俺たちは短いやりとりの後、一人ずつ握手を交わしていく。


 そして、俺たちはナルドたちに見送られながら、エルフの里を目指して出発したのだった。


 その直後。


「あの……色々とありがとうございます。私たちのために色々と……」


「アルスさんたちが助けてくれなかったら、こうして薬を持ち帰れなかった……」


 改めて俺たちに感謝を伝えてくるニーナとマリア。


「お礼の言葉は、里に着くまで取っておいてくれ。無事に二人を里に戻すまでが俺の仕事……っていうか、使命だからな」


「は、はい!」


「よろしくお願いします!」


 エルフの里までは、約三百キロ。


 何があるかわからない。気を抜かずにいくとしよう。


「パパ、エルフの里ってどんなところなの~?」


 空を自由に飛び回りながら、楽しそうにシルフィが訪ねてきた。


「俺も初めて行くからよくわからないかな。話によれば、自然豊かで綺麗な街並みらしい。っていうか、ニーナとマリアに聞いた方がいいんじゃないか?」


「あ、そうかも! ニーナママとマリアママに聞くね!」


 そう言いながら、二人の方へ飛んで行くシルフィ。


「あ、いや二人はママじゃ……まあ、今はいいか」


 そういえば、伝え忘れていたことがあった。


「ユキナ」

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