第135話:付与魔法使いは白状する
嘘をついていたことを責めているような感じではなかった。
「実はですね……」
俺は、思いのたけを話した。
俺の過去。
目標を達成する上では、勇者という立場が足枷になること。
冒険者として活動した方が都合が良いということ。
そして、直近の予定としてはエルフの里に向かうということ。
「なるほどの……」
全てを話し終えると、フロイス国王は僅かな間、無言になった。
そして、考えがまとまったのか、俺の方を向いて一言。
「では、お前は自由に活動するのじゃ」
フロイス国王は、あっさりと認めてくれたのだった。
「いいんですか⁉」
「お前に助けられた身。無理は言えぬ」
どうやら、フロイス国王の真意としてはまだ俺に勇者になってほしかったらしい。
これは、ある意味ご褒美のような扱いなのかもしれない。
「しかし、勇者は全滅してしまった。次なる勇者はどうするか……」
勇者は、志だけでなく絶対的な能力も求められる。
冒険者としての実利に拘らず、ある意味滅私奉公の精神で王国に尽くしてくれる存在……となると、確かに限られてくる。
かなり勇者の選考には苦労していたようだったので、今のところ当てがないのだろう。
自由を認めてもらったお礼……というわけではないが、俺が知る中で勇者に向いている冒険者を伝えてみることにした。
「俺は、ナルドたちを推薦します。彼らは王都の危機の際にも戦っていました。信頼できると思います」
「ナルドたちとな……? 確かに、もともと勇者をしていた彼らなら……。しかし、能力面には課題が残るのじゃ」
「そこは問題ないでしょう。知っての通り、個々の能力は伸び代がありますが、チームとしての連係は既に十分です。それに、能力面はこれから伸びていきますよ。必ず」
ナルドたちは、俺への依存が止まってから確実にレベルアップしている。
俺の存在が成長を阻んでいたということではない。
明らかにモチベーションが違うのだ。
新加入のレオンは貪欲に成長しようという意欲があることも大きいかもしれない。
良くも悪くも負けず嫌いでプライドの高い集団であることは確かで、今はこれが上手く作用したことでパーティの雰囲気を良くしている。
もともとポテンシャルはあるので、このまま成長すれば、自信をもって勇者と名乗れる組織になるだろう。
「まあ、しかし。そうじゃな。他に当てがあるわけでもないし、ナルドたちも悪くはない。アルスがそこまで言うのなら……それもありかもしれぬな」
もともとはナルドたちに注目していなかったフロイス国王だったが、俺の意見がきっかけになり考えが変わりつつあるようだ。
「ええ。ぜひ参考にしてください」
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