第134話:付与魔法使いは片付ける
獣人の肉体から魔力が流出しなくなるということは、フィーラが魔力を吸収しようとしても、吸収する対象の魔力が存在しないため、無意味と化す。
「ま、魔力が集まらない⁉ ど、どうして⁉ あ、あなた何をやったの⁉」
まさかの事態に動揺するフィーラ。
どうやら、俺の即興の付与魔法は上手くいったらしい。
「ちょっとした工夫で、俺は色々とできるんだ」
俺は端的に答え、俺の中でせき止めていた魔力を解放。
思い切り地を蹴り、一瞬にしてフィーラと肉薄する。
「な、なんて魔力……! う、嘘……信じられない! あ、あなたガリウスとの決闘の時はやはり実力を隠して……」
フィーラがどうでもいいことを話し終えるのを待つことなく――
パアアアアアアアンッ‼
俺は、フィーラの頬に向けて拳を繰り出した。
ギリギリ死なない程度に加減しての攻撃だ。
とはいえかなりの力を込めていたため、フィーラの身体が回転しながら弾丸のような鋭い軌道で吹き飛んでいく。
ドガアアアアアアンッ‼
フィーラの身体が激突した時には、衝撃で壁にひびが入っていた。
「ああ……ああ……」
……やれやれ。
「これで、ようやく片付いたな」
俺はため息を吐きつつ、セリアとユキナのもとに戻ったのだった。
俺は、フロイス国王を縛っていた縄を解きながら声を掛ける。
「陛下、怪我はないですか?」
「ああ……おかげ様で無事じゃ」
フロイス国王は意気消沈しているようだった。
まさか、信頼していた勇者たちに裏切られるとは夢にも思っていなかったのだろう。
縄が全て解けた後、フロイス国王は全てを悟った様子で呟いた。
「やはり、ゲリラダンジョンの件もお前じゃったか……」
まあ、さっきの一撃を見せてしまえばもはや言い逃れはできないか。
この一件で、国王には俺の実力がバレてしまった。
「ええ、そうでした。嘘をついてしまってすみません」
こうなった以上は、正直に白状する他なかった。
勇者として活動することを求められれば、その範囲でどうにか活動するしかなさそうだ。
まあ、嘘をついていたことで信用を失った今、勇者になることを求められるか
どうかは半々といったところだろうか。
「……まあ、良い。しかし、どうしてそこまで勇者になることを嫌がる?」
フロイス国王は、柔らかな口調で尋ねてきた。
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