第132話:付与魔法使いはユキナの戦いを見守る

 セリアとマグエルの戦いと同時に、ユキナとセレスの戦闘も始まっていた。


「私、魔法師との一対一で負けたことがないの。なぜなら――」


 セレスは剣を構え、ユキナに襲い掛かった。


「敵が魔法を撃つ頃には、もう斬り終えてるから!」


 自信を表に出すだけのことはある。


 なかなかのスピードだった。


 だが、ユキナが相手では分が悪かったようだ。


「へえ。じゃあ、今日があなたは初めて負けることになるのね」


 ユキナはそう呟くと、腰を軽く捻った。


 シュン!


 ギリギリのところで、セレスの剣はユキナを外れてしまう。


「な、なんで⁉ 見切られた⁉ い、いやそんなわけない!」


 まさかの事態に混乱するセレス。


 ここまでの流れを完全に読み切っていたユキナは、セレスの背後を完全に取っていた。


「これでおしまいね」


 至近距離からの、『火炎光線(ファイア・ビーム)』。


 ドガアアアアアアアアンッ‼


 ユキナの魔法を至近距離から受けたセレスの身体は吹き飛ばされ、ちょうど決着がついていたマグエルの方へ飛んで行く。


 ドン!


 飛んできたセレスの身体がマグエルと勢いよく衝突したのだった。


 二人は目を回しており、もはや戦える状況ではなくなっている。


 セリア、ユキナ共に完勝と言って差し支えないだろう。


「良くできた。完璧だったよ」


 褒めてやると、二人は嬉しそうに微笑んだのだった。


 ぶっつけ本番で初めての対人戦だったが、これで自信をつけてくれたら嬉しい。


 ――さて、これで残るはフィーラだ。


「まさか、二人を倒してしまうとは。なかなかやるようね……」


 フィーラもセリアとユキナの一戦は驚いたようだった。


 王座から立ち上がり、こちらに警戒を強めている。


 だが、俺たちを恐れてはいないようで、どこか余裕を感じる笑み浮かべていた。


「でも、私はさっきの二人のようにはいかないわよ」


 フィーラはそう言うと、目を閉じて祈るように手を組んだ。


「まさか、これは……」


 『魔力探知』が使える俺だからわかった。


 百人超の奴隷たちの魔力が一気にフィーラのもとへ集まる動きを見せていた。


「私はね、念には念を入れる主義なの。準備しておいて良かったわ」

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