第131話:付与魔法使いはセリアの戦いを見守る

 セリアとユキナの力を見抜くとは、なかなか良い感覚をしている。


 だが、俺に関しては見破れていないようだ。


 特に隠していたわけではないのだが、俺は常に無駄に魔力が発散しないよう魔力を意図的にせき止めている。


 実力以上に過小評価されてしまっているようだ。


 まあ、どうでもいいのだが。


「フィーラ様はお前を殺す気はなかったようだが、ここに来ちまった以上は生きて返すわけにはいかねえな。やっていいですね? フィーラ様?」


 マグエルが尋ねると、フィーラは王座に座ったまま答えた。


「ええ。やってしまいなさい」


 フィーラの指示を受けて、マグエルとセレスはそれぞれ武器を構えた。


「じゃあ、俺は金髪のお嬢ちゃんを仕留めるってことで」


「ふーん。私は銀髪の子かぁ」


 どうやら、二手に分かれてセリアとユキナに攻撃を仕掛けるらしい。


 俺もどちらかに加勢した方が早く決着が尽きそうだが、今回は辞めておくことにした。


「セリア、ユキナ。これも良い経験だ。任せていいな?」


「わ、わかりました!」


「対人は初めてだわ……」


 これから冒険をする上で、敵が魔物だけとは限らない。


 ぶっつけ本番にはなるが、この辺で慣れておくのも悪くないだろう。


 まあ、ピンチになるようなことがあれば、すぐに加勢することになるが。


「痛みを感じる間もなく葬ってやろう!」


 槍を両手に持ち、勢いよくセリアに襲い掛かるマグエル。


 なかなかのプレッシャーを与えてくるが、強くなったセリアは落ち着いていた。


 マグエルの動きを予測し、ワンテンポ早く動けていた。


「それ、本気で言っているのですか……?」


 セリアは悪気なさそうに呟き、真っ向から剣で迎え撃った。


 キンッ!


 剣と槍が衝突し、硬い金属音が鳴った。


 かと思えば――


「な、何⁉」


 勢いをつけて襲い掛かったはずのマグエルは、セリアの応戦による反動でザザっとと滑りながら後退させられてしまう。


 ――完全に、マグエルはセリアに力負けしていた。


 セリアは、状況判断や落ち着きのみならず単純なパワーでも優っている。


 この一瞬でマグエルはそれに気づいたようだ。


 だが、もう遅い。


「たあっ!」


 セリアは声を出しながら、今度は積極的にマグエルに襲い掛かる。


 キン!


 剣と槍が衝突し、マグエルの手から槍が吹き飛んだ。


 吹き飛んだ槍は遥か向こうの壁に突き刺さり、もはや回収は困難だ。


「し、しまった!」


 どうやら、勝負ありのようだな。

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