第129話:付与魔法使いは雑魚を蹴散らさない

 ◇


「三十人……か」


 王宮の入口。


 ここでは、大勢の『レッド・デビルズ』の冒険者たちが侵入者を待ち構えていたらしい。


 その中に、見覚えのある男の姿もあった。


 慎重が高く、白髪ロングヘア―と白髭が特徴的な壮年男性である。


 こいつの名前は確か……ヘンリック・フューリー。


 『レッド・デビルズ』のギルドマスターだったはずだ。


 さっきの話によれば、実はこいつは表剥きの指導者でしかなかったようだが。


「ふはは! ここは通さん! 皆、かかれ!」


 ヘンリックの指示で、一斉に呪刻魔法をかけられた軍勢が俺たちに襲い掛かってくる。


「ふっ」


 俺は、三十人に漏れなく付与魔法を掛けた。


 『呪刻解除』×30


 すると、勢いよく俺たちに襲い掛かってきていた軍勢たちの闘争心は鳴りを潜め、戦意を喪失したのだった。


「何が起こったんだ⁉ の、呪刻魔法が解けた!」


「も、もう命令を聞かなくていいんだ!」


「こんなことしてられっかよ! 俺は邦に帰るんだ!」


 三十人の軍勢は、俺たちを素通りして出口へと向かっていったのだった。


「な、何が起こっているのだ⁉ わ、私の魔法が解かれた……? そ、そんなことがあってたまるか……! こ、このようなことはあってはならないのだ!」


 どうやら、『レッド・デビルズ』の冒険者たちに掛けられた呪刻魔法は、ヘンリックに掛けられたものだったらしい。


 自分がかけた魔法を目の前で解かれたことに動揺しているようだ。


 とはいえ、こいつに説明してやる義理はない。


 時間が勿体ない。


「とりあえず、そこで眠ってろ」


 俺は左手で『火球』を放つ。


 ドオオオオンンン‼


「行こう」


「はい!」


「ええ」


 死なない程度に弱らせ、動けないようにしてから先へ向かったのだった。


 さて、ここからが本番だ。


「フィーラたちと国王の居場所は……ん? なんだこれ」


 『周辺探知』でフィーラたちの居場所を探っていた。


 フィーラたちと国王は、謁見の間に集まっているらしいということがわかった。


 一度会ったことがあるため、魔力の特徴をもとに割り出すのは簡単だった。


 気になったのは、彼ら以外の人の反応だ。


「どうしたのですか?」


 俺の反応を怪訝に思ったのか、セリアが尋ねてきた。

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