第128話:付与魔法使いは信じる

「確かに、この状況でその子たちを放っておきたくないアルスの気持ちはわかる。だがな、王宮の中に連れていくのはそれこそ危ないぞ」


「分かってる」


「分かってねえ。今は連れ去られるリスクよりも、王宮の中で殺されるリスクの方が高いだろ。普通に考えて。アルス、どうかしてるぞ? お前らしくない」


「……」


 確かに、ナルドの言うことも一理ある。


 いや、一理どころじゃないな。


 実際その通りだ。


 ある程度は付与魔法の『防御力強化』で突発的な攻撃も防げるが、想定外のことが起きたときには対処しきれないかもしれない。


 だが、だからといって目を離してしまうこともリスクだ。


 ……って、これじゃ堂々巡りか。


「アルスさん、私たちは大丈夫ですから……」


「そうだよ。ただでさえ大変なのに、私たちじゃ力になれないし……」


 当人のニーナとマリアもこのように言っていた。


「……」


 どうしたものか。


 と思っていたところで、ナルドが提案をしてきた。


「一つ俺に考えがある。アルス、俺たちに依頼を出せ」


「依頼?」


「ああ。俺たちがお前が戻るまでその二人を必ず守ってやる」


「お前たちが……⁉」


 想定外の提案だったため驚いたが、確かに合理的ではある。


 ナルドたちは、勇者ではなくなったと言っても、未だこの王国の中では最上位の実力を持つ有力冒険者なのだ。


 しかし、問題が一つだけある。


「まあ、アルスが俺たちを信じてくれるなら……だが」


 ――これだ。


 俺が信じられるかどうかにかかわってくる。


 俺は、一度裏切られた。


 だが、追放の件は謝ってくれたし、俺の中ではもう解決した問題。


 依頼報酬の金額次第では、二人を奴隷として売却しても旨味がないよう設計することもできる。


 要は、ナルドたちに依頼を出すかどうかは、俺の気持ちの問題だ。


「みんな、二人を頼む」


 俺は、即決で彼らに依頼を出すことに決めた。


 六人の改心は本当だと思っているし、なによりリーダーのナルドは、魔の森を抜けた先のキャンプで俺の身代わりとなって、矢を受けたこともある。


 信用するには十分。


 断る理由がなかった。


「二人を頼む。じゃあ、行ってくる」


 俺たちはナルドたちに二人を預け、王宮に向かったのだった。

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