第127話:付与魔法使いは止められる

「それで合ってる。フィーラたちは職権を利用して王宮の中からめちゃくちゃにしたらしい。ガリウスはおそらくだが、あいつら三人とは関係がない。だから『カタリナ王国』で殺されたんだろう」


 ナルドたちに『カタリナ洞窟』の件は話していないのだが、ガリウスはフィーラたちに殺されたという認識のようだった。


 状況的にそう判断したのだろう。


「なるほどな。フロイス国王の安否は?」


「今はなんとも……だが、多分まだ無事だ。王国を乗っ取ることが狙いなら、諸々の処理が終わるまで殺すつもりはないはずだ」


 確かに、フィーラたちの狙いが王国の支配なら、国王を殺してしまうよりも、現状の王政を正式な形で継承する方が色々とメリットがある。


 国王を殺してしまってもできなくはないが、こちらの方がスムーズなことは確かだ。


「なら、早い話。あいつらを倒して国王を奪還すればいいってことだな?」


「そうなるが……敵は既に王宮の守りを固めてる。簡単にはいかないぞ?」


 確かに、明らかに騎士団の数よりも多い数の『レッド・デビルズ』の構成員たちが既に王宮に辿り着いているだろう。


 魔物とは違い、敵は頭を捻って作戦を立ててくる。


 それ故に普通に戦えば、俺たちでも苦戦させられるかもしれない。


 だが、それは『普通に戦えば』の話。


「さっきの付与魔法を見ただろ? ほとんどは無力化できる」


「確かに、アルスならやれるかもな……」


 ほとんどの敵を無力化できれば、残るはフィーラ・マグエル・セレスの三人。


 警戒は必要だが、勝てない相手ではないはず。


 あと、戦闘はともかくどうやって国王を無事に奪還するか、だな。


「とりあえず、王宮に行ってくる」


「いや、ちょっと待て」


 王宮の方に身体を向けた俺の服を引っ張るナルド。


「ん?」


「その二人も連れて行くつもりか?」


 ナルドが見ていたのは、ニーナとマリアだった。


「ああ。二人にさせるわけにはいかない。連れていくしかないだろう」


「正気か?」


「ああ。心配なんだ」


 非常時と言っても、この国でエルフの地位が低いことは変わらない。


 俺には、この子たちを無事に返す義務がある。


 放ってはおくわけにはいかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る