第124話:付与魔法使いは異変を感じる

 ◇


 王都に帰還した俺たちは、すぐにあの狼煙が誤射ではないことを悟った。


「す、すごい人……!」


 異様な光景を前にしたユキナはそう呟いた。


 住民たちが次々と王都からの避難を始めており、王都の門の周りは人で溢れている。


 まずは、状況確認だな。


「何があったんだ?」


 俺は王都から離れようとする村人を捕まえて尋ねる。


 しかし――


「お、俺もよくわからないんだ。犯罪ギルドの連中が暴れまわってて、村から出るようにと騎士団の人が言ってて……何が起こってるんだ⁉」


 と、逆に質問をされてしまう始末。


「……ひとまず中に入ろう」



 俺たちは王都から出る人の波をかき分けながら、中に入る。


 王都の中では、人と人が至るところで戦闘を繰り広げていた。


 剣士同士で戦っている一組を見ていると、ヒントが見えてきた。


 一方は、村人が言っていた通り騎士団の人間だ。


 服にメイル王国騎士団の象徴である鷹の刺繍が入っているから、パッと見でわかる。


 問題は、もう一方。


『戦ってる人、片方は『レッド・デビルズ』の人でしょうか……?』


「多分そう。じゃあ、この騒ぎはそういうことなのかしら……?」


 セリアとユキナもほぼ同じタイミングで気が付いたようだ。


 騎士団の人間と戦っている人物には、犯罪ギルド『レッド・デビルズ』の構成員であることを示す刺青が入っていた。


 でも、何が狙いなんだ……?


「なんだか、同じ方角を目指しているように見えるわね」


 ユキナの言葉にハッとさせられた。


「……確かに」


 一人一人の動きではわからなかったが、全体を見ていると、皆どこか一点を目指して動いているように見える。


 その方角への進行を邪魔する冒険者たちと戦っているような構図だった。


 この方角をヒントにどこを目指しているか考えると、すぐに答えがわかった。


「王宮……⁉ そうか……! これは反乱なんだ!」


「えっ⁉ 反乱ですか⁉」


「じゃあ、王都を占拠するつもりで……?」


「多分な」


 犯罪ギルドがこうした無謀行為をしたことは過去にもあった。


 だが、安定した地域の占拠は難しく、過去のそうした反乱は全て失敗に終わっている。


 その反省なのかそうした話は長年なかった。


 まさか『レッドデビルズ』程度の規模で仕掛けるとはな。

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