第122話:フィーラたちは襲う
◇
フィーラたちの決起集会から十五分後。
勇者のうちの一人、剣士セレスは騎士団長室を訪れていた。
メイル王国では、フィーラたち新たな勇者が発足するまでは国家としての治安維持を王国騎士団がすべて担当してきた。
治安維持の範囲には、政治的敵対勢力や犯罪ギルドに対するものの他には『ゲリラダンジョン』の発生のような魔力災害時の対応までもが含まれている。
新勇者たちも、王国所有の勇者という性格ゆえに、その業務は王国騎士団に与えられてきたものとやや被る側面がある。
王国騎士団と勇者パーティは時に協力することが求められるため、顔合わせを済ませている。
そのため、警戒されることなく近づくことが可能だった。
「リヒト騎士団長。お話が」
「ああ、セレス殿か。話というのは?」
「それがですね……」
適当に言葉を交わしながら、セレスはチャンスを伺う。
セレスの狙い――否、フィーラたちの狙いは、王国騎士団の指揮命令系統のトップを司る騎士団長リヒトの殺害。
冒険者の中ではトップクラスの実力者ゆえ、フィーラたち三人は一対一なら負けることはないと考えていた。
だが、騎士団をまとめて相手にするとなれば話は別。
そこで三人は、最初に指揮を取る騎士団長を殺害することで騎士団を混乱に陥れ、有利に事を運ぶことを計画したのだった。
「近いうちに合同でカタリナ洞窟に向かいたいため、フィーラ様が騎士団のリストが欲しいと」
「ふむ。書類どこやったかなぁ」
ガサガサ。
セレスの思惑通り、リヒトは武器を持つセレスから目を離してしまう。
セレスは音を立てないよう静かに剣を抜き――
ザアアアンンンッ‼
警戒感ゼロの騎士団長リヒトに斬りかかったのだった。
リヒトは肩から背中にかけて大きく斬られ、部屋には血しぶきが舞った。
「うあああああああああああああっ!」
悲鳴を上げるリヒト。
すぐさま振り返ったリヒトと、セレスの目が合う。
「な、何をするんだ⁉ なぜこんなことを⁉」
何が起こったのか理解できず、騎士団長リヒトは傷を押さえながらこのように尋ねることしかできなかった。
セレスは質問に答えることなく、トドメを刺すため再度剣を向ける。
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