第120話:付与魔法使いは二人のもとへ帰還する

 骨からはまだ発散しきっていない残存魔力を感じる。


「持ち帰ってやるか……」


 これを放置しておけば、また別の魔物に食べられてしまう可能性もある。


 何度も強力な魔物が生産されてしまう事態は避けたい。


 ガリウスのせいで厄介なトラブルに巻き込まれてしまった俺としてはやや複雑な感情ではあるが、持ち帰って供養してやることにしたのだった。



 ◇


「ア、アルス!」


「良かった……!」


 ダンジョンの攻略後、洞窟を出たところでセリアたちと合流した。


 俺の帰還に安心してくれるのは良いのだが――


 一点、気になることがあった。


 セリアたちの周りに大量の魔物の死体が転がっていたのだ。


 数はざっくりだが、百体以上はいると思う。


「……何があったんだ?」


「実は、アルスが行った後めちゃくちゃ魔物が集まってきて……」


「倒しているうちにこの数になったみたい」


 おそらく、ダンジョンの魔力が周りにいた魔物を集めてしまったのだろう。


 精霊の森の魔物が精霊の魔力を吸収して強化されるように、強いダンジョンの周りにいるだけで魔物は魔力を養分にして成長できる。


 それゆえに、魔物は栄養にできる強い魔力に本能的に惹きつけられるのだ。


「そっちも大変だったな。二人がいてくれて助かったよ」


 俺一人だったら、ダンジョンは攻略できてもニーナとマリアを守り切ることはできなかった。


 すべてが丸く収まったのは二人のおかげだ。


「さて、王都に戻って報告を――ん?」


 踵を返し、王都の方を向いた時だった。


「なんでしょうか……煙?」


「いや……というより、あれは狼煙じゃない?」


 王都の中心にある王宮の上空から、煙のようなものが見えていた。


「王都で何かあったのか……?」


 狼煙は、何らかの非常事態により街がSOSを出していることを意味する。


 戦や魔物の侵入など理由は様々考えられるが、間違いじゃなければ助けが必要な状態に陥っていることだけは確かだった。


「急ぎで戻ろう」


 ダンジョンの攻略に疲れた身体に鞭を打ち、俺たちは速足で王都に帰還したのだった。

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