追放された付与魔法使いの成り上がり 〜勇者パーティを陰から支えていたと知らなかったので戻って来い？【剣聖】と【賢者】の美少女たちに囲まれて幸せなので戻りません〜

第119話：付与魔法使いは討伐に成功する

　フィーラ・マグエル・セレスの名前が聞こえた気がする。

　言葉をそのまま受け取る、相当な恨みを持ってそうだ。

　やはり予想していた通り、ガリウスは事故で亡くなったのではなく、フィーラたち仲間の勇者が絡んでいそうだな。

　まあ、だとしても俺がやるべきことは変わらない。

「だいたいお前の実力は分かった。次で仕留めて、楽にしてやる」

　俺は、まずボスが動き出すのを待った。

「ガウルルル‼」

　唸りながらさっきと同様に飛び込んできた瞬間。

　俺は右に逸れながら攻撃を避けつつ前進する。

　しかし慣性を無視するような鋭い切り返しで俺を追いかけてくるボス。

　まあ、この程度の動きは想定内だ。

　『重力反転』。

　俺は、重力を反転させる付与魔法を自分自身に付与。

　身体がフワッと浮き、ボスの鋭い爪による攻撃をギリギリのところで避けた。

　次なる一手は――

　『腐臭生成』。

　強烈な腐臭を発生させる付与魔法だ。

　シルバーウルフは、人間の数十～数百倍の嗅覚を持つと言われている。

　肉体が大きかろうと、その特徴は変わらない。

　この嗅覚は武器だが、同時に弱点にもなり得る。

「ガウルルルル‼」

　バアアアアアアンッ！

　あまりの強烈な臭いに耐えかねたボスは、唸り声を上げながら鼻を地面に叩きつけた。

　この隙を見逃すわけもない。

「仕上げだ」

　『重力反転』。

　空中を浮遊していた俺は、さっきと同じ付与魔法を使う。

　ただし、今度は下から上への反転ではなく、上から下への反転。

　通常の何倍もの速度で落下しつつ、俺は剣を振り下ろした。

　ザアアアアアアアアアアアアンッ‼

　俺の剣はヌルっとボスの首を通り抜け――

　ドオオンッ！

　ボスの首が地面に落下したのだった。

「ふう……」

　どうにか倒すことはできたが、一瞬でも気を抜けば、逆に俺がやられていた可能性もある。

　なかなかの難敵だった。

　未だに冷や汗が止まらない。

「ん、あれは……」

　ボス部屋の奥に白いものが見えた。

「骨……そうか、ガリウスの……」

　どうやら、先ほどのボスはガリウスをここで食していたらしい。

　俺が記憶しているガリウスの大きさに対して骨が少ないように見えるが、おそらく――

「やはりな」

　骨がある場所の周りを剣で少し掘ってみたところ、土で埋まった部分から残りの骨が出てきた。