第118話:付与魔法使いはボスと戦う

 精神が食べられる? わかりにくいな。


「えーと、つまりガリウスはあの魔物に食べられたけど、逆にガリウスを食った魔物がガリウスの魔力に飲み込まれたってことか?」


「そう!」


 この世界は弱肉強食。


 普通は格下の魔物に殺され、魔力が残存するうちに食べられるなんてことはないのだが、何か重大なアクシデントがあったのだろう。


「じゃあ、あの魔物の正体はいったい何なんだ? シルバーウルフなのか? それともガリウスなのか?」


「両方! ……だけど、どっちかというとガリウスかな?」


「なるほど……」


 あのボスから、ガリウスの魔力を強く感じる理由がなんとなくわかった。


「シルフィは一旦隠れておいてくれ。あいつは俺が相手する」


「わかった~! パパ頑張って!」


 シルフィはシュンっと姿を消し、俺とシルバーウルフは一対一になった。


「さて、気を引き締めないとな……」


 俺がこのボスを前にして驚いたのは、魔力の特徴だけではない。


 魔力の強さから感じ取れる個体自体の強さもおよそ自然界に存在するものとは思えなかった。


 俺が対峙したことのあるどの魔物・人よりも何倍も強いと断言できる。


 シルフィを隠れさせたのは、巻き込まれないようにするためだ。


「ガウルルルル!」


 低音が響く唸り声を上げながら、一瞬で俺の懐に飛び込んできた。


 めちゃくちゃ速い……っ!


 カキン!


「くっ!」


 しかも、スピードだけじゃなく巨体を活かしたパワーもなかなかのものだった。


 ドオオオオオンッッ‼


 俺は剣でボスの攻撃を受け流し、後退する。


 吹き飛ばされないようどうにか踏ん張ったが、衝撃による地響きが聞こえる。


「ヤバいな……」


 こいつがもしダンジョンの外に流出すれば、どれだけの被害が出るかわからない。


 誇張抜きに人類滅亡も現実的にあり得る……。


「ガウルルル……フィーラ……マグエル……セレス……許さん……俺を……裏切りやがって……許さん……ガウルルル……」


「……っ⁉」


 ボスが喋った⁉


 魔力の特徴が上書きされただけじゃなく、人格まで憑依してるのか……⁉

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