第117話:付与魔法使いはボスと遭遇する

 そして――


 ドドドドドオオオオオンッ‼

 ドドドドドオオオオオンッ‼

 ドドドドドオオオオオンッ‼

 ドドドドドオオオオオンッ‼

 ドドドドドオオオオオンッ‼


 一度に五回の閃光があったかと思えば、一瞬で魔物たちは燃え尽きていたのだった。


「パパ、どう?」


「す、すごいな……」


 すべての魔物を一撃で倒した事実を前にして、力を借りない選択肢はない。


 これなら安心して任せられそうだ。


「私、やっていい?」


「頼む」


「わかった!」


 シルフィは、次々と遠くにいる魔物を魔法で撃破していく。


 逆に俺は進路を阻む最低限の魔物だけに注力することで、足を止めることなく前へと進むことができるようになった。


 シルフィと分担して雑魚を倒すようにしたことで、劇的にダンジョンの攻略効率が上がっている。


 これなら、想定していた以上に早く……そして楽にボスまで辿り着けそうだ。


 ◇


 魔物を倒しながら足を進めること、約二十分。


 ようやくダンジョンの最奥まで辿り着くことができた。


 ここでボスと対峙することになる。


 俺たちを待ち構えていたのは、巨大なシルバーウルフ。


 ボスを前にして、俺は驚かざるをえなかった。


「え……? ガリウス……?」


 見た目がガリウスと似ている……ということではない。


 こいつから感じられる魔力の個性が、俺が記憶しているガリウスのものと酷似しているように感じたのだ。


 人も魔物も共通して魔力の特徴には個体差がある。


 指紋で想像するとわかりやすいかもしれない。


 指の模様は個体差があるが、どんな形をしていても『滑り止め』という機能には影響しない。


 これと同様に、魔力にもやや個体差があるのだ。


 俺が常に使っている『周辺探知』も、この特徴を利用してより高精度な陰影を頭の中でイメージすることができている。


「多分、ガリウスはあの魔物に食べられたの」


 シルフィがボスを見つめながら、そんな言葉を漏らした。


「え?」


「普通は魔物が人間を食べても何も変化しないけど……捕食者が自分よりも圧倒的に強い個体を食べちゃうと、死体に残っていた魔力量によっては消化・吸収できずに不完全に融合しちゃって、逆に捕食者の精神が食べられちゃうことがあるの!」

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