第116話:付与魔法使いは雑魚に苦労する

 俺はたった一人のダンジョンでそう呟きつつ、道を阻む魔物たちに次々と『火球』を放つ。


 魔物の種類は様々だが、この瞬間に狙うは三体。


 緑色の肌を持つ人型の魔物、ゴブリン。


 鋭い牙を持つ吸血コウモリ、ブラッド・バッド。


 大型の狼の見た目をした肉食獣、シルバーウルフ。


 狙いすました俺の『火球』は、正確に魔物に衝突し、爆発した。


 ドオオオオオオンッ‼


 ドオオオオオオンッ‼


 ドオオオオオオンッ‼


「ん?」


 砂煙が晴れた後に確認すると、魔物の亡骸は五体。


 どうやら、爆発に巻き込まれた周りの魔物もついでに始末してしまったようだ。


 意図していなかったのだが、ダンジョンの中は魔物の密度がかなり高いため、たまたま近づいてきていた魔物も上手く巻き込めたのだろう。


「よし」


 この後も、ダンジョン最奥にいるはずのボスを目指して進む。


 道中の魔物もどれも一撃で倒せる程度の強さ。


 しかし、強度とは別の部分でなかなかに大変だった。


「……にしても、数が多いな」


 まったく休む暇がない。


 途中からは全ての魔物を相手にするのではなく、行く手を阻む魔物のみを剣で斬っていくように作戦を変えたものの、これでも数に苦労させられていた。


 ダンジョンに入ってから、もう既に百体以上は倒している気がする。


「パパ! 私、手伝った方がいい?」


 俺の肩の辺りをいつも通り飛んでいたシルフィがそんな提案をしてきた。


「え?」


 シルフィが魔物と戦うなど、今まで想像していなかった。


「シルフィって戦えるのか?」


「ちょっとだけなら大丈夫。私、精霊だから!」


 確かに、シルフィが持つ魔力はかなり大きい。


 上手く使いこなせれば、このダンジョンにいる程度の魔物に後れをとることはないだろう。


「……とりあえずやってみてくれるか?」


 しかし、必ずしも『魔力量』=『強さ』にはなるわけではない。


 任せても問題ないかどうか、確かめ見ることにした。


 危なさそうなら俺が加勢すれば良いし、試してみて損はない。


「いくねー!」


 シルフィが両手を突き出すと、魔法陣が出現し淡く輝く。

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