第115話:付与魔法使いは二人を二人に頼む

 それはともかく。


 この状況でニーナとマリアをダンジョンの深い場所まで連れていくことはできない。


「セリア、ユキナ。洞窟の外に出て二人を見ていてくれるか?」


「アルス一人で行くつもりなのですか⁉」


「いくらアルスが強いと言っても……正気なの⁉ 一旦王都に戻ってギルドと相談した方が……」


 確かに、発生したダンジョンの攻略は依頼には含まれていない。


 あくまでも、俺たちが受けた依頼は『カタリナ洞窟』の調査だからだ。


 だが、依頼内容に含まれていなかったとしても冒険者には時に臨機応変な対応を求められる。


 王都には、クリスもいる。


 新居を探していると言っていたから、長くここに住むつもりなのだろう。


 そう考えると、放置する決断はできなかった。


「このダンジョンは、近いうちに崩壊する可能性がある。いつかはわからないが……下手をすればギルドが攻略パーティを組織するまでもたないかもしれない」


「そ、そんな!」


「それは本当なのですか⁉」


「二人にもついてきてほしいのはやまやまだが、ニーナとマリアをここに放置するわけにもいかない。……まあ、危なそうならすぐに戻ってくるが。……頼めるか?」


 セリアとユキナは一瞬考えて、迷いつつも答えを出した。


「……わかりました」


「アルスが絶対無事に帰ってくるって約束してくれるなら……」


「ああ、約束する」


 ポータルの外からざっくりと中の魔力を確認したところ、かなり強い魔物がいそうだが、俺の力が通用しないと感じるほどではない。


 というか、もしも俺が逃げることすらも叶わない敵が潜んでいるのなら、誇張抜きに遅かれ早かれ世界は滅亡してしまうだろう。


 そうなったら、少し早いか遅いかだけの話だ。


「じゃあ、行ってくる。二人を頼んだ」


 ニーナとマリアを二人に任せ、俺はダンジョンの中に潜入した。


 ◇


 ダンジョンの構造は、俺が知る『カタリナ洞窟』と同じだった。


 下層や上層などはない平面型のダンジョン。


 途中はたくさんの道で分かれており、行き止まりも多数ある。


 内部がどのように繋がっているか予め知っていなければ、迷子になってしまいそうだ。


「まあ、俺には関係のない話だがな」

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