第112話:付与魔法使いは疑問を抱く
「そうだな」
一度剣を交えた俺だからわかるが、ガリウスほどの実力者なら無傷で最奥まで行って戻ってくることは容易い。
出来たばかりの連係が取れていないパーティとはいえ、勇者として選ばれた者が四人で行って犠牲を出すようなエリアではないことは確かだ。
「実は、この件でギルドは『カタリナ洞窟』を調査してほしいと言ってきてるんだ」
「なるほど」
「冒険者ギルドとしては、新勇者の三人……フィーラ・マグエル・セレスを疑っているらしい。内ゲバでもやったんじゃないかってな」
当然の疑いだろう。
ガリウスがこの狩場の魔物に殺されたとは考えにくいという状況の中、殺そうと思えばいつでも殺せる実力を持つ三人が近くにいたわけだからな。
そして、俺もその可能性が高いと考えている。
言葉では表現しづらいが、フィーラたち三人からはガリウスとは違う意味でどこか気味の悪さを感じていた。
直感的にあいつらならやりかねない――と思ってしまう。
勘だけではなく、数々の違和感もフィーラたちが共謀してガリウスを殺害したのだとすれば、綺麗に説明できる。
つまりだ。
疑念を抱いたギルドは、第三者であるナルドたちのパーティを使って、『カタリナ洞窟』では、ガリウスが死ぬような状況だったのか調査させたいということだろう。
しかし、一つわからないことがある。
「事情は把握したが、それがどうしたんだ? 受けたのなら向かえばいいと思うが……」
『カタリナ洞窟』なら、ナルドたちが遅れを取るような魔物は存在しない。
俺の助けなんていらないだろうし、本当に何の目的で来たのかよくわからない。
「俺もそうは思うんだけどよ。で、でも仮にだぞ……? 仮に本当にガリウスがここで魔物に殺されたってことだったらヤバいんじゃないか……って思うんだ」
「え?」
「こ、怖いんだよ。俺は」
「何がだ……?」
「俺は、アルスが抜けてから……特にゲリラダンジョンでボコボコにされて死を悟ってから、己の弱さを自覚したんだ。もし何かあった時に仲間を守れる自信がねえ」
「……なるほどな」
確かに、客観的に見ればフィーラたちが起こした事件である可能性は高いが、そうではない可能性もなくはないと考えられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます