第90話:付与魔法使いは不安になる

 俺も付与魔法で多少料理はできるので、手伝えることがあれば手伝うこととしよう。


「メニューは何がいいですか? 特に希望がなければ、ハンバーグとポテトサラダにしようと思いますが」


「え? ハンバーグならマカロニサラダがセットじゃない?」


「へ? さすがにマカロニサラダは違いますって! 私の故郷では絶対にポテサラでした」


「私の故郷ではマカロニサラダだったけど? ポテトサラダなんて邪道だわ」


 ハンバーグまでは決まったようだが、なぜか二品目で揉めセリアとユキナ。


 俺としてはどちらでも良いような気がするのだが、二人には拘りがあるらしい。


 食の好みばかりは合わないものがあるのも仕方ない。


 とはいえ、喧嘩は良くないのでこの辺で止めておこう。


「……両方作ればいいんじゃないか?」


「あっ、確かにです」


「それがいいわね」


 ふう。


 どうにか丸く収まったようだ。


「じゃあ、私買い物行ってきますね!」


「セリアだけじゃ心配だから、私もついていくわ」


「一人で大丈夫ですよ⁉ 子供じゃないんですから!」


「セリアじゃマカロニ買い忘れそうだし」


「あっ、忘れてました」


「ほら」


 二人が仲良く買い物に出た後の部屋は、一気に静かになった。


「セリアさんとユキナさん、仲良いんですね」


 ニーナが遠慮がちに話しかけてきた。


「だな。ちょっと羨ましいよ」


「え? アルスさんもお二人と仲良しですよね?」


「俺は……なんか違う気がする。ずっと友達ではいられないのかも」


 特にセリアは隙を見せれば結婚の話が出てきて油断ならないし、ユキナとの関係も一歩間違えればあちらに行きそうで危うい。


 男女の間での友情には厳しいものがあるのだろう。


 ◇


 セリアとユキナの二人が買い物から戻ってきた後、すぐに夕食作りに取り掛かった。


 二人は早速料理に取り掛かる。


 料理はできると言っていた二人だったが、俺にはどこかぎこちなく見えた。


 レシピがうろ覚えなのか、常にワンテンポ遅れているし、手つきもおよそ料理に慣れているとは思えない動き。見ていて心配になる。


「えっと……大丈夫なんだよな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る