第89話:付与魔法使いは誤解される
◇
早速、クリスがおすすめしてくれた宿を取ったのだが、俺が想定していた以上に遥かに良い部屋だった。
十分な部屋面積はもちろん、しっかり清掃が行き届いている。
さらに、部屋の中は改装済みで新築並みの綺麗さ。
ベッドはフカフカだし、おまけに本格的な調理ができるキッチンまで備え付けられている。
「めちゃくちゃ良いお部屋ですね~!」
「これが一泊一万ジュエルって、安いを通り越して不安になっちゃうわね」
確かに、少し王都のハズレにあるとはいえ、この宿泊料は破格だ。
ニーナを加えた四人で宿泊しているので、一人当たり二千五百ジュエル。
念のため補足しておくと、半額割引券を利用して一万ジュエルなので、元値は二万ジュエル。
……だとしても安いのだが。
なお、部屋を分けなかった理由は、残り一部屋しか残ってなかったからである。
まあ、二部屋取れた場合でも、どう分けるか問題は発生してしまっていたのだが。
「こんなに良いキッチンがあると料理とかしたくなちゃいますね!」
「あれ、セリアは料理ができるのか?」
何気なく尋ねると、セリアはよくぞ聞いてくれました! とばかりに鼻を鳴らした。
「アルスとの結婚に備えて、花嫁修業はバッチリなのです!」
「へ、へえ……」
「アルスさえ良ければ、今すぐにでも挙式しても良いのですが……」
えっと……俺はどのように反応すればいいのだろうか。
セリアのことはもちろん嫌いではないのだが、今はまだ結婚は特に考えていない。
好意をアピールされるのは嬉しいし、将来的にはわからないが、まだ先の話な気がする。
「ま、まあ結婚の話はともかく……あっ、そういえばユキナはどうしたい?」
話をはぐらかすため、ユキナに話を振る。
すると、なぜかユキナの顔がカァっと赤くなった。
「え、アルスと結婚?」
「なぜそうなる⁉ キッチンの話だって!」
「あー、そっち……」
なぜか、途端に興味をなくして死んだ目になるユキナ。
「私はどっちでもいいわ。料理は不得手ってわけでもないし」
「え、ユキナも料理できるのか?」
「そんなに上手くないけど、一応は」
「へー。じゃあ、せっかくだし、今日は自炊にしようか」
ということで、今日の夕食は部屋で調理することとなった。
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