追放された付与魔法使いの成り上がり 〜勇者パーティを陰から支えていたと知らなかったので戻って来い?【剣聖】と【賢者】の美少女たちに囲まれて幸せなので戻りません〜
第88話:付与魔法使いはおっさんと再会する
第88話:付与魔法使いはおっさんと再会する
「覚えていてくれたか! そうだ、クリスだ」
ベルガルム村で冒険者試験を受けたときに、俺の試験を担当してくれたCランク冒険者だ。
確か、ハゲを晒してしまったお詫びに俺の付与魔法で毛根を復活させた覚えがある。
あの時はめちゃくちゃ喜ばれたっけ。
「どうしてここに?」
「実は、アルスのおかげで髪が生えてから自信が漲ってきてな。もうこんな年だが、彼女にプロポーズしたんだ。それで、結婚することになったから、ちょっと新居探しにな」
「そ、そんなことが! おめでとう」
「ありがとう、これもアルスのおかげだよ!」
クリスは満面の笑顔で俺の手をギュッと握った。
俺がやったことは、単に付与魔法で毛根を復活させただけなのだが、思わぬところまで影響を与えていたようだ。
幸せそうでなによりである。
「ん? それより、アルスは奴隷が欲しいのか?」
奴隷商の店の前にいるので、勘違いさせてしまったらしい。
いや、マリアを買おうとしているわけだから、あながち間違いでもないのか?
「そういうわけではないんだが、色々あってな」
誤解を解くため、クリスに今の状況を手短に説明した。
「なるほど……そういうことだったか」
クリスは腕を組んで考え込むような仕草をする。
「まず、そこの奴隷商は絶対に賄賂は受け取らねえ。持ちかけるだけ無駄だ」
「そうなのか……?」
「ああ。店主は変なところで真面目だからな。そこで俺から提案なんだが――」
クリスは、ビッと親指を立てた。
「エルフ探しは俺に任せろ」
「え?」
「こう見えて、俺は結構長く王都で冒険者やってたんだ」
「そうなのか?」
それは知らなかった。
確かに、冒険者が拠点を変えることはよくあること。
以前は王都で活動していたとしても特に違和感はない。
「ってなわけで、ここの冒険者はみんなマブダチみたいなもんだ。俺のネットワークにかかりゃ、今晩中には見つけられる。今日はゆっくり休んでおけ」
「ほ、本当に……? っていうか、頼んでいいのか?」
「王都の中にいるなら余裕のよっちゃんだぜ。っておいおい、遠慮なんていらねえぞ?」
クリスは頭をふわっと揺らして見せた。
「アルスのおかげで人生変わったんだ。このくらいじゃお返しにもならねえ」
正直、めちゃくちゃ助かる。
賄賂が効かないとなると、ひたすら聞き込みをするくらいしかアイデアがなかった。
「明日の朝にでも報告できればと思うが……そういや、アルスたちはどこに泊ってるんだ?」
「ああ……宿か」
そういえば、まだどこに泊るか決めかねていたな。
「その顔はまだ決めてない感じだな? ちょっと待ってろ」
クリスは財布の中をゴソゴソと確認し、一枚の紙を俺に差し出した。
「割引券?」
「おう。この宿がおすすめだ。安くて質がいい。ちょうど割引券があったから取っておけ」
「ありがとう。助かるよ」
割引自体もありがたいが、いまいち王都の宿事情はわからないので、おすすめを教えてくれるのは誇張抜きで助かる。
「じゃ、また明日な。ゆっくり休めよ」
一時はどうなるかと思ったマリアの捜索だったが、協力な助っ人の登場で目途がついた。
「な、なんだか急展開すぎて……こんなこともあるんですね」
「これもアルスの人徳ってことなのかしら」
「パパすごい!」
「いやいや……」
俺はマリア創作の件ではまだ何もできていない。
さすがにこの状況で俺の力は関係ないと思うのだが……。
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本日、付与魔法の2巻発売になりました!!
書店で見かけたらぜひ手に取っていただけると嬉しいです!
(電子書籍でも配信されています)
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