第91話:付与魔法使いは料理をする

「はい、多分!」


「ユキナも、不安なところはないか?」


「……多分」


 多分ほど心配になる言葉もないのだが、大丈夫と言っているからには信じることとしよう。


 しかし、これほど不安要素だらけの中、何も起こらないはずもなく。


「や、やってしまいました……ハンバーグが炭に……。あと、ジャガイモが消滅しました」


「ああ……マカロニがべちゃべちゃ。……どうして?」


 もはや、どうやって失敗したのかわからないくらいに壊滅的なことになってしまっている。


「えっと……念のため聞くんだが、二人とも本当に料理したことあるんだよな?」


「はい!」


「もちろん」


「いつもは上手くいってるのか?」


「……」


「……」


 なぜそこで黙る⁉


 ユキナはともかく、セリアはかなり自信がありそうだった。


 いったいどこから出てくる自信だったんだ……?


「ま、まあレシピは一応記憶してたみたいだし、努力は伝わるよ」


「今回こそは上手くいくと思ったのですが……」


「はあ……どうしてこうも上手くいかないのかしら」


 料理というものは、分量通り・時間通りを守れば誰でもそこそこの味になるはずなのだが、どうしてこうなるんだろうな?


 ……まあ、今更どうこう言ってもしょうがない。


 これではさすがに食べられないので、食べられるようにするとしよう。


「一旦、元の状態に戻すぞ」


 俺は、『リペア』で失敗してしまった料理を素材に戻した。


「今度は一緒にやってみよう」


 俺もさほど料理は上手くないが、レシピの通りに調理することで、最低限食べられる程度の味にはできる。


「アルスすごいです!」


「これはなかなかできることじゃないわよ」


「いや、普通に当たり前のことをやってるだけだからな⁉」


 やれやれ。


 こうして調理を続けること約一時間。


 ようやく完成に漕ぎつけた。


 難しいメニューではなかったのだが、セリアとユキナの二人に料理を教えながらだったため、やや時間がかかってしまった。


 お腹が空いていることもあって、完成度以上に美味しそうに感じる。


 さて、それでは食べるとしよう。


「わあっ! 美味しいです~!」


「すごい……こんなにちゃんとしたのができるのね!」


「パパなんでもできる~」


 レシピ通りに進めただけでこれほど感激されるとは思わなかったが、確かに味は美味しい。


 これなら、あえて自炊した甲斐があったというものだ。


 少し多めに作っていたのだが、残ることなく綺麗に完食してしまったのだった。

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