第70話:付与魔法使いは王都に着く

 朝九時と、早い時間に王都に到着した。



「わぁ~、王都ってこんな感じなんだ~! へえ~!」


 興味深そうにソワソワと街の様子を観察するシルフィ。


 この時間は、これから冒険に出る冒険者や店舗を構える商人が準備をしている姿が見られる。


 門番からの情報によると、フロイス国王との謁見は俺と旧勇者パーティ同時に行うとのこと。


 時間は正午なので、まだ時間がある。


「一旦ここで分かれよう。まあ、どうせ昼にはまた会うけど」


「おう。護衛ありがとうな。おい、アルスに報酬を」


 ナルドの指示を受けて、魔法師のカイルが百万ジュエルの包を俺に差し出した。


「どういたしまして。なんていうか、俺も意地になって悪かったな」


「アルスは悪くないよ」


 そんなやりとりをしつつ、ありがたく報酬を受け取る。


「じゃあ、またな」


「おう」


 これにて護衛依頼による臨時パーティは解散となった。


「アルス、シルフィちゃんは一目に触れても大丈夫なのですか?」


 セリアがやや心配そうに尋ねてきた。


 精霊ということで人目に触れるとまずいかなと思い、ベルガルム村では精霊界に隠れてもらうことが多かったので、その流れから気にしているのだろう。


「ここならシルフィを精霊だと思う人はいないと思うし、それに――」


 言いながら、付与魔法『拡大』をシルフィに付与する。


「わっ! シルフィちゃんが大きくなりました⁉」


「こんなこともできるの……?」


「まあな」


 これなら、周りからは羽が生えたコスプレをしている人間にしか見えない。


「気分はどうだ? シルフィ」


「人間になったみたい! 変な感じ? だけど良いかも! パパすっごい!」


「なら良かった」


 さて。


 普段の三人+シルフィのパーティとなったわけだが、昼までどうしようか。


「シルフィちゃんは王都は初めてですし、色々見て回りたいですね」


「と言っても、昼には王宮につかなくちゃいけないのよね」


「確かに……ですね。じゃあ、朝ご飯を食べ歩きつつ商業地区を見て回るとかどうですか?」


「いいかも。アルス的にはどう?」


「俺も賛成だな。良い案だと思う」


「じゃあ、さっそく向かいましょう!」


 商業地区は、王都の中で最も賑わっている地域である。


 ここから比較的近い場所にあるし、王宮に向かうルートの途中に当たるので、無駄がない。


 それに、王都の見どころはなんと言っても王国一栄えている商業地区にある。


 限られた時間で王都を楽しむなら最適なチョイスと言っていいだろう。

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