第69話:付与魔法使いは発見する

「俺なら、魔法を解除できたはずだ。もう少し早けりゃ……」


 暗殺者とはいえ、目の前で死なれて何も思わないわけがない。


 それに加えて、何も聞き出せないまま死なせてしまったことに対する後悔もあった。


 死人となった以上、もう情報を聞き出すことはできない。


 この三人はただの下っ端だ。


 俺を殺そうとした親玉はまた暗殺者を送ってくるかもしれない。


「アルスのせいじゃねいですよ……」


「そうよ。アルスは何も悪くないわ」


 何とも言えない感情でいっぱいになり、落ち込んでいたところをセリアとユキナの二人が慰めてくれた。


「二人とも……ありがとな。でも、魔力が見えなかった理由すらわからないままだ」


「魔力が消えてた……ですか?」


「昨日言ってた『周辺探知』で見えないってこと?」


「その理解で合ってる」


 セリアは疑問符を浮かべているが、ユキナはピンと来たようだ。


「ちょっと待ってて」


「ん?」


 すると、ユキナは暗殺者たちの亡骸の衣服に手を伸ばした。


 ゴソゴソと何かを探しているらしい。


「あった。多分これね」


 ユキナは、暗殺者の上着の内ポケットから、勾玉のような形の魔道具を取り出した。


「これは?」


「自分の魔力を悟られないようにする魔道具。昔ちょっと聞いたことがあったんだけど、何に使うのか不思議に思って覚えてた」


「そんな魔道具があるのか」


「そうみたい」


 魔道具は盲点だった。


 俺はあまり道具関連については詳しくないため、ユキナがいなければ迷宮入りしていたかもしれない。


「それにしても、魔力が消える魔道具か……厄介だな」


 思わぬところに『周辺探知』の弱点があった。


 これでは、俺の命を狙う親玉が生きている限り常に危険が付きまとう。


 さっきの暗殺者程度の実力ならどうとでもなるとして、もっと強い相手が陰から襲ってきたときには、対処しきれないかもしれない。


 俺の危険だけならまだしも、一緒に行動するセリアとユキナにも危険は及ぶ。


「アルス、王都へ急ごう」


 ナルドが俺の肩をポンと叩き、そう言った。


「王都の中ならここよりは安全だと思う。違うか?」


「……そうだな」


 もう少しゆっくりしてから王都へ向かう予定だった俺たちだが、既に全員が目覚めているため、このまま出発することになったのだった。

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