第66話:付与魔法使いは問い詰める

 僅かな呼吸の音から正確に位置を割り出し、そこに向かって石を二つ投げた。


「うがっ」


「ああ……っ!」


 悲痛な声を漏らす二人の男。


「弓術師の仲間か⁉」


「そんなところにも隠れていたなんて!」


 ナルドとレオンも流れからすぐに状況を把握したようだ。


「く、くそ……足の骨が砕けて動けねえ」


「やべえ案件に手出しちまったな……」


 脂汗を垂らした黒ずくめの男が二人、這いながらも逃げようとしている。


 当然、みすみす逃がすわけがない。


「ナルド、レオン。二人を捉えてくれ」


「おう! 任せろ!」


「はい!」


 二人が向かってくれたため、俺は先ほど魔法で吹き飛ばした男を確保することにする。


「ここまで来い」


 俺は、付与魔法の応用により遠く離れた黒装束の男をフワッと浮かせ、俺の元へ運んだ。


 ドスン!


 状況的に丁重に扱う必要はないので、手荒な形で地面に下ろした。


 ようやくこれで三人確保だ。


 いつの間にか、朝日が上り始めている。


 五感をフルに使って周りを警戒するが、どうやらこの三人以外には近くに誰もいない。


 まだ警戒を解くことはできないが、ひとまずは安心だろう。


「さて、事情を聞かせてもらおうか」


 俺は三人の男に近づき、尋問を始めた。


 しかし、三人は頑なに口を開こうとしない。


「その身なりなら暗殺者ってところか? 誰に雇われた? 何が目的だ? 答えろ!」


「「「……」」」


 ナルドが強い口調で問い詰めるも梨の礫である。


 そうこうしているうちに、騒ぎにより目覚めたセリアやクレイナたち七人が集まってきた。


「ど、どういう状況なのですか⁉」


「すごい音がしたと思えば、知らない人いるし……本当にどういうことなの?」


 真っ先に俺のもとに来たセリアとユキナが疑問の声を上げる。


 全員が集まったところで、俺は状況共有をすることにした。


「実は……」


 すべての説明を終えた頃には、朝日は完全に上っていた。


「なるほど……ふむふむ、そういうことだったのですね」


「……わからないということがよくわかったわ」


 二人合わせて百点満点の反応を示したのは、セリアとユキナ。


 すべてを説明した俺自身が状況を理解できていないので、俺の話を聞いた七人も事実以外に何が起こっているのか把握できないのは当然である。


「つまり、こいつらに吐かせればいいんだよね?」


 双剣士のグレイスが不気味な笑顔を顔に浮かべながら、そのように発言した。

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