第67話:付与魔法使いは尋問を任せる

「まあ、そうなんだが……いくら聞いても答えないんだ。どうしたもんかな」


「私に任せてよ」


 グレイスはそういうと、短剣を舌で舐めた。


「大人しく答えなきゃ、どうしよっかな~?」


「えっと……まさか」


 グレイスは、少しサディスティックな気質があるのだ。


 何をしようとしているのか、なんとなくわかってしまう。


「もう、私……我慢できなくて。良いでしょ? アルス……ね?」


 下から俺を見上げて、うるうるした瞳を見せるグレイス。


 まあ、命を狙った輩に対してならこの方法も仕方ないか。


 苦労して捕まえたのに、何も聞き出せないんじゃ意味がないしな。


「わかった。でも、絶対に殺すなよ」


「やった! アルス優しい! ありがと!」


 果たして、俺は優しいのだろうか……。


 そのようなことを頭の片隅で考えていると、グレイスによる拷問が始まった。


「うがああああああああ!」


「も、もうやめてくれ……あっあっあっああああああっ!」


「ひいいいいいいいいいいいいいっ! 許して! 許して! 許して!」


「あははははははっ!」


 男たちの悲鳴をかき消すように、甲高いグレイスの笑い声が聞こえる。


 さすがに俺の暗殺を狙った相手だとしても同情してしまう。


 まあ、全て話し終えれば傷は治してやれるので、嫌なら早く話してくれ。


 目を背けてグレイスの拷問を待つこと三分ほど。


「話す気になったって~」


「早いな」


「この苦しみが続くなら死んだ方がマシなんだって」


「まあ……気持ちはわかるよ」


 グレイスを除く九人は全員がドン引きしているが、グレイスの溢れんばかりの笑顔からは楽しさと充実感が感じられる。


 ……味方で良かったのか、悪かったのか、判断に迷うところだ。


「……それで、どうして俺を狙ったんだ?」


 早速、黒装束の男たちに尋ねた。


「お、俺たちは……暗殺者なんだ」


「依頼主から依頼を受けただけで詳しいことは何も聞かされていない」


「そ、そうなんだ! だから知らないことは話せない……悪いが」


 あれだけの拷問を受けた末のことなので、これは本音だろう。


 だが、知らないからと言って引き下がるほど俺は素直じゃない。


「事情は知らなくても、誰に依頼されたかくらいは言えるよな?」


「そ、それは……」


 一斉に口ごもる暗殺者。


「もしかして私の出番?」


「いや、もう少し待て」

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