第64話:付与魔法使いは狙われる
「ん? どう――」
尋ねようとした瞬間。
ザアアアアアアアアンンッ!
俺に向かって腕を伸ばしたナルドの肩に、突如飛んできた矢が突き刺さってしまったのだった。
「え……?」
あまりに突然のことすぎて、理解ができなかった。
どこから飛んできた? ナルドは俺を庇おうとして……ってことは、俺に向かって飛んできたのか? いったい誰が?
大量の疑問符が浮かんでくるが、まずは怪我を負ってしまったナルドのことが最優先だ。
「がはっ!」
かなり矢が深くまで刺さっているようで、ナルドは苦しそうに血反吐を吐いていた。
「大丈夫か⁉」
「ああ……こりゃもうダメだ」
「どうして……」
「お前が立った瞬間、キラっと何か光ったように見えたんだ。そしたら、身体が勝手に動いて……こうなった。無事で良かったぜ……」
その声は、どんどんか細くなっていく。
「アルス、最期に言わせてくれ。お前に言った告白に何一つ嘘はない。……お前は、必ずビッグになる。……いや、もうなってるか。……そうじゃなくて、勇者になったからには、お前にも野望があったはずだ。お前なら必ず成し遂げられる。俺の分まで頼……」
「ナルド! しっかりしろ!」
「ア、 アルスさん! 僕、クレイナさんを呼んできます!」
「ひ……必要ない!」
「で、でも!」
回復術師のクレイナを呼びに行こうとしたレオンを、ナルドが大声で止めた。
「いいか、まだ敵はどこかにいる……それに、こりゃ完全に致命傷だ。がはっ! 回復魔法がどうとか、そういう次元じゃねえ。無駄だ……」
ナルドは、自分の状態を誰よりもよくわかっているようだ。
確かに、矢の長さと刺さった方向を見るに、内臓を貫通している。
会話ができているだけでも奇跡と言える状況。
だが……それでも俺の前で勝手に死なれちゃ困る。
「致命傷? だからなんだよ、ナルド。俺が救ってやる」
そう言いながら、俺は思い切りナルドに刺さった矢を抜いた。
鮮血がドッと溢れ落ちる。
「やめてくれ……俺に希望を持たせ……って、痛くねえ! 治ってる! はっ⁉ どういうことだよこれ⁉ 幻覚か⁉」
つい数秒前まで致命傷を負っていたナルドの傷は完全に消滅し、元の状態に戻っていた。
貫通した衣服までがすっかり元通りになっている。
「付与魔法だ」
「は?」
「付与魔法の応用で、俺は特殊なヒールもできるんだ」
「なんでもありかよ⁉」
「まあな」
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