第61話:付与魔法使いは実践させる
「はい!」
レオンは元気よく返事をした後、『周辺探知』を始めた。
「……むむ、これで……み、見えました!」
「多分それで完璧だよ。よくできたな」
ただ、これだけで終わるとあまり意味がない。
俺は、ちょっと意地悪をしてみることにした。
「あ、あれ……? きゅ、急に見えなくなって……あれ?」
「モヤがかかったように見えなくなっただろ?」
「ど、どうしてわかるんですか⁉ ま、まさかアルスさんが何かを⁉」
「一応、『ジャミング』ってものがあることも知っておいた方が良いと思ってな」
そう答えた後、俺はレオンへの妨害を止めて説明を始めた。
「これは、魔力を薄く広げて影を認識するスキルだ。逆に言えば、強い魔力に干渉されると、影が全てを埋め尽くしてよくわからなくなる」
「そういうことをしてくる魔物もいるということですか?」
「魔物では遭遇したことはないが、敵は魔物とは限らない」
「確かに、それはそうですね……」
勇者を狙う盗賊などと遭遇した経験がないが、大金を持っている冒険者を狙う盗賊もたまに報告されている。
真正面から戦えばほとんどの場合は冒険者が盗賊に負けることはない。
しかし、休憩中を襲われたり、魔物と戦っている間を狙われるなどのイレギュラーな状態を狙われれば結果が逆転することもあるのだ。
「気をつけます!」
これで、基本は全て教えた。
「後は精度を高めるだけだ。時間がかかるから俺がついてやることはできないが……一人でもできるな?」
「はい! ありがとうございました!」
よし、これで問題ないだろう。
俺たちはこれにて休憩を終え、王都への歩みを再開した。
「色々あって抜けたパーティを強くするなんて、アルスは優しいのですね」
「まあ、レオンに恨みはないし……それに、俺はもう気にしてないからな」
確かに、俺は不本意な形で勇者パーティを追放されたが、だからといってナルドたちに死んでほしいとまで思ったことはない。
『元仲間』とはなってしまったが、彼らと冒険した過去が消えるわけじゃないし、最初の頃の良くしてくれた記憶も俺の中には残っている。
今でも競争しているわけではなく、単にパーティが違うだけで目的を同じにする同志だし、レオンを強化することは最終的な目標に間接的に繋がることでもある。
むしろ、教えることで俺の中での知識の整理ができるので、更に強くなれる気さえする。
優しい……というより、俺は自己中を極めただけなのだ。
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