第60話:付与魔法使いは驚かれる
「まず、魔力をほんの少し広げる練習をしてみよう」
「えっと……?」
いまいち俺の指示を理解できていないようだ。
「魔力を意識的に動かすことはできるか?」
「魔力って動かせるんですか……?」
「もちろんだ。まずはそこから始めよう」
付与魔法師は、付与魔法を使う際に必ず魔力を使っている。
つまり、これまでも無意識的に使っていたものを意識させるだけのことだ。
「『攻撃力強化』を自分に付与してみてくれ。その際に、身体の内側を通る魔力の流れに注目するんだ。せき止められないか、あるいは流れを変えられないか試してみよう」
「わ、わかりました」
レオンは早速、付与魔法を自分自身に付与。
「あっ……なるほど、こういうことですか」
すぐに理解したようだ。
俺が説明するまで理解が不十分だったレオンだが、崩壊寸前だった組織とはいえ、正式に勇者として抜擢された冒険者。
なかなか優秀である。
……と言っても、ここまでは簡単だ。
「そういうことだ。魔力を動かせるようになったら、次は自分を中心に外に魔力を広げていくんだ。最初は狭い範囲でいい。何かに衝突したら感覚的にわかるはずだ。その衝突した部分から陰影を頭の中で繋げて、形を把握するんだ」
「なるほど……で、でもこれって魔法の常識から外れてませんか⁉」
「ん?」
「普通、魔法っていうのは……付与魔法もそうですけど、魔力をいかに効率よく現象に変換するというものだったと思います。これは、魔力を使ってはいますが、別の何かに変わっているわけではありません。こんな使い方があったなんて……」
レオンは、かなり衝撃を受けている様子。
確かに、どの教科書にはこういったことは書いていないのかもしれない。
少なくとも、俺が読んだ付与魔法の教科書には書かれていなかった。
「まあ、だから俺はこれを魔法とは呼んでいない。単なる技術だ」
「な、なるほど……そういうことなんですね」
魔法ならジョブによる適性があるが、魔力はすべてのジョブが扱えるため、ジョブによる適性はない。
そういう意味で、誰でも使えるということだ。
「さて、やってみよう」
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