第59話:付与魔法使いは頼まれる
『周辺探知』とは、意識的に薄く弱い魔力を発散することで、魔力が衝突した陰影を把握し、人や魔物の影を把握する魔法である。
勇者パーティ時代に危機管理を鍛えるために付与魔法で何かできないか考えていたときに身に着けた能力である。
付与魔法の応用というアプローチから身に着けたが、仕組みとしては魔力を発散するだけなので、正確なコントロール技術は必要なものの、付与魔法自体は使えなくても問題ない。
「魔物の位置と種類が正確にわかる。北方二十メートルの岩陰にウルフ、東方十メートルに大きめのトカゲ西方五十メートル上空にフリフォン、地中三メートル下にモグラ……みたいな感じかな」
脳内にマッピングされた座標をそのまますらすらと答えただけなのだが――
「す、すっごいです! ど、どうしてわかるんですか⁉」
「何も見てないのに⁉」
と、なぜかめちゃくちゃ驚かれてしまった。
「コツを掴めば簡単なんだよ。今日はとりあえずこういうスキルもあるんだってことを伝えておきたかった。二人にも近いうちに身に着けてもらいたいからな」
一見凄そうに見える魔法だが、インパクトに対してそれほど難しい技術ではない。
集中して取り組めば、一日でそこそこ使えるようにはなるだろう。
「あ、あのアルスさん!」
「ん?」
セリアとユキナへの説明を終えたタイミングで、付与魔法師のレオンに話しかけられた。
「僕でもそのスキル使って使えたりしますか⁉」
「え? ああ、練習すれば使えると思うぞ。教えておこうか?」
「お、お願いします!」
レオンはなかなか向上心が高いようだ。
こういうストイックなメンタルを持つ冒険者は嫌いじゃない。
付与魔法師は、俺を除いて基本的には攻撃職や回復術師などと比べるとバフを掛け終えた後は活躍しづらい。
普段から何かできないか考えていたのだろう。
「ちょっと休憩したいんだが、問題ないか?」
『依頼主』のパーティリーダーであるナルドに確認を取る。
「ああ、もちろんだ。頼む」
快く了承を得られたことだし、早速始めるとしよう。
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