第51話:付与魔法使いは相談する(1)

 思わず、声が出てしまった。


「内容は……?」


「アルスさんにとって良い連絡だということは想像できますが、私どもも詳しく聞かされていないので……すみません」


 当然といえば当然のことだが、手紙の封は切られていない。


 自分で確認するしかなさそうだ。


 俺は、やや緊張しながら封を切り、中の書類を確認する。


 前半は、ゲリラダンジョン討伐に対するお褒めの言葉。


 続いて、現状の勇者パーティを解散し、新たに勇者パーティを発足する旨が記されている。


 そして、重要なのは最後。


「えっ、俺が勇者パーティのリーダーに……⁉」


 手紙には、新たに結成する勇者パーティのリーダーとして俺を指名すると書かれていた。


「大出世じゃないですか⁉」


「きっと、ゲリラダンジョンの活躍が評価されたのね」


 セリアとユキナの二人は大盛り上がりである。


「パパすご~い! ゆうしゃ? はわかんないけど偉い人なんだよね?」


 精霊界から話を聞いていたシルフィも出てきて、パチパチと手を叩いていた。


「やはり……! リーダーというのは少し驚きましたが、実績を考えれば納得ですね!」


 ギルドの受付嬢は、新勇者の発足とそれに関する事項については予想していたようだ。


「勇者パーティか……」


 周りは皆、出世だと喜んでくれているが、俺の気持ちとしては微妙だった。


 ナルドたち前勇者パーティでの悪い記憶が嫌でも蘇る。


「何か気になることでもございますか?」


 俺の曇った感情を察したのか、受付嬢が尋ねてきた。


「指名って書いてあるけど、これって断れるのかなって」


「え? リーダーをということですか?」


「いや、勇者になること自体を」


 俺がそう答えると、受付嬢は驚いたようだった。


「じ、事態されるということですか⁉ ……な、なるほど。ど、どうなのでしょうか……陛下の勅令を断るというのは前代未聞です。私……というかギルドとしてもなんとも……」


 断ることは想定されていなかったようだ。


 しかし、俺の目標が魔王の討伐であり、今の俺にとっては勇者パーティに属することはむしろ遠回りになると感じている。


 俺には、名誉など必要ないのだ。


 ……どうしたものか。


「も、勿体ないですよ!」


「そうよ! どうして断るの? 意味がわからないわ」


 セリアとユキナからも猛ツッコミを受けてしまう。

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