第50話:付与魔法使いは手紙を受け取る

 ベルガルム村に出現したゲリラダンジョンの騒動から三日後。


 連日宴が執り行われ、村を救った英雄として俺たちは担ぎ上げられた。


 感謝されるのは嬉しいのだが、村のどこに行っても注目されるのでさすがに疲れた。


「おおっ……英雄様のお通りだ!」


「ああ……神々しい!」


「村を救ってくれてありがとう!」


 冒険者ギルドに向かって歩いているだけで、村人がこの反応である。


 これも有名税だろうということで、声を掛けられるたびに笑顔を作って手を振っている。


「アルス、ちょっと疲れてない? 大丈夫?」


 心配の言葉をかけてくれたのはユキナだが、セリアも気にしてくれているのが伝わってくる。


「大丈夫。こんな経験初めてだったから、慣れてないだけだよ」


「ならいいんだけど」


 そんな会話をしながら、冒険者ギルドの中へ。


 この三日間、冒険者としての仕事は休んでいたのが、今日はどういうわけかギルドの方から呼び出しがあったため出向いたという形である。


「あっ、お待ちしておりました!」


 いつもの受付嬢の姿が見えた。


「こちらへ」


 カウンターの方へ来た俺たちをさらに奥の場所に誘導する受付嬢。


「勇者アルス様宛の大事な手紙を預かっているので!」


 あれ……?


 はっきりとは言っていないのだが、いつの間にか俺が元勇者だったことバレてる?


 まあ、もはや隠すようなことでもないし、別に気にすることでもないか……。


 案内されたのは、ギルド職員以外立ち入り禁止の部屋。


 大量の書類が書架に収められている。


 部屋の中心には三人ずつが向かい合って座れる長方形のテーブルスペースがあった。


「ここは?」


「我々職員が事務所として使っている場所です。冒険者の方の目に触れない場所なので少し散らかっていてお恥ずかしいですが……どうぞおかけください」


 指示された通りに、俺たち三人は椅子に腰掛けた。


 俺が真ん中に座り、俺を挟む形で左隣にセリア、右隣がユキナである。


 基本的には整頓されているが、書類整理が追いつかずに散らかったままの場所もある。


 俺たち冒険者を陰から支える現場。


 知識としては知っていたが、直接見るのは新鮮だった。


 ……と、それはともかく。


 他の冒険者が入らない場所にわざわざ連れてきたということは、何か特別な話があるのだろう。


 受付嬢が向かい側の席に座ると、俺の前に一通の便箋を差し出した。


「昨日、王都からアルスさんたち宛に届いた手紙です」


 王都とベルガルム村の間は迂回する必要があり、人が移動すると数日かかるのだが、伝書鳩を使った通信だと一日かからずに届く。


 状況的に、俺たちが攻略したゲリラダンジョン関連のことだろうか。


「俺たちに? 誰から?」


「フロイス陛下です」


「国王から⁉」

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