第49話:新たな勇者が発足する(2)

「……む?」


「前所属のパーティではリーダーをしておりました。統率力には自信があります」


「いや、実はパーティリーダーはもう決めているのだ。ここに居合わせていないが」


 新勇者たちの間にどよめきが起こった。


 パーティリーダーを既に決めていたことではなく、四人の他にも勇者がまだいるということに。


「なっ……し、失礼しました。それでは、リーダーは誰に……?」


 動揺するガリウスとは対照的に、フロイスは楽しそうに髭を引っ張りながら楽しそうに答える。


「アルス・フォルレーゼだ」


「アルス……というと、連合勇者パーティの付与魔術師……でしょうか?」


「ああ。まだ報道していないが、彼の力で件のゲリラダンジョンを攻略したと報告を受けている。ううむ……素晴らしい才能だ。彼こそ勇者パーティのリーダーに相応しい」


「さ、左様でございますか……」


 ガリウスは拳をグッと握り、プルプルと震えていた。


 国王の前ということで納得した反応を見せているが、内心ではまったく納得していない。


 勇者パーティのリーダーは、パーティ内で絶対的な権力を持つ。


 緊急時にパーティが瓦解しないよう、パーティリーダーの命令は絶対に従う決まりがある。


(俺が、アルスとかいうガキの下だと? 冗談じゃねえぞ! 能力は俺の方が優れているはずだ。俺がゲリラダンジョンに遭遇していれば今頃は俺が……!)


 国王の決定に疑問を感じたのは、ガリウスだけではない。


 赤髪赤目の妖艶な雰囲気の女魔法師、フィーラも同様だった。


「パーティリーダーはどこかのタイミングで交代することもあり得るのかしら?」

「今のところはそういったことは考えていないが、数年に一度は議論しても良いかもしれんな」


「……左様でございますか」


 フィーラはさらに突っ込んだ質問まではすることなく引き下がった。


「数日後にはアルスが王都に到着し、合流する予定だ。それまでは各自待機しておいてくれ。本格的に動くまでにはもう少し時間がかかるだろう」


 国王フロイスの言葉で今日は一旦お開きになり、四人の新勇者は謁見の間を離れた。


 一人になったガリウスは、顔を歪めてふっと嗤う。


(リーダー交代が数年に一度だと⁉ とんでもねえ話だ。アルス・フォルレーゼ……どんな奴だか知らないが、ぶっ殺してやる!)


 アルスさえいなければ、優れた能力を持つ自分がパーティリーダーに選ばれるはず――そのような安直な理由だった。


(でも、俺が直接動いて証拠が残るとマズいな。……正々堂々戦う必要はない、どんなに強い冒険者でも、不意を狙われれば弱い。よし……暗殺者を使うとするか)


 ガリウスは、これから王都にやってくるアルスの不意を狙う計画を立てたのだった。

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