第三章
第48話:新たな勇者が発足する(1)
ベルガルム村での一件から一週間後。
メイル王国の王宮では、謁見の間に四人の冒険者が集められていた。
シンと静まる緊張感漂う雰囲気。
王座から四人を見下ろす白髭を貯えた国王、フロイス・メイルが口を開く。
「ガリウス・シェフィールド。フィーラ・フォレスト。マグエル・ブルッグ。セレス・アストレア。諸君ら四人を我がメイル王国の勇者を命ずる」
王の命を受けた四人は恭しく頭を垂れる。
これにて忠誠を誓うとともに、彼らは正式にメイル王国擁する勇者パーティの身分を手にした。
国王フロイスが新たな勇者を発足しようと決意したのは、五日前のこと。
もともと、『勇者パーティ』は各国共同の出資により組織された唯一の存在だった。
しかし、かねてより勇者パーティの弱体化が問題視されてもいた。
弱体化の原因は、長年魔王との戦闘が起こらない平和な時代を過ごす中での平和ボケである。
各国が対魔王を目的とした『勇者パーティ』への分担金を節約し、代わりに自国領土内の人的・金銭的リソースを増やした。
その結果、『勇者パーティ』は名誉職のような扱いになってしまった。
無論、国内の上澄みでなければ勇者になれないのだが、トップオブトップの冒険者は自身の能力との釣り合いが取れていない勇者を選ばないというのが実情だった。
この流れに追い打ちをかけたのが、六年前にアルスの住むメイル王国領アルヒエル村に突如出現したゲリラダンジョンだった。
この天災が人間の住む世界のどこでも起こる可能性があることが知られた結果、多国籍軍である『勇者パーティ』へ投じられる資金は下降の一途を辿った。
直接的に被害を被ったメイル王国は、各国とは違い、対魔王を想定した戦力もゲリラダンジョン発生の原因を辿れば維持する必要があるとの立場を取っていた。
しかし、先日のゲリラダンジョンにおいて、『勇者パーティ』が居合わせていたというのに、まったく活躍することなく、別のパーティが攻略したとの知らせを受けた国王は考えを改めた。
もはや、これでは魔王軍と戦う以前の問題。
もう、多国籍軍という形での『勇者パーティ』は必要ない。
これからは、メイル王国が独自で新たな『勇者パーティ』を組織しよう――そのように考えた。
こうして、新たな勇者として集められたのがガリウスたち四人の冒険者である。
この四人は王都を拠点にして活動していたため、すぐに招集することができた。
「ところで、パーティリーダーについてだが……」
フロイス国王の言葉に耳をピクっとさせた金髪の剣士、ガリウスがすかさず口を開く。
「私にお任せください」
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