第47話:付与魔法使いは決意を固める
ダンジョンから出た後、村人がいない村を歩いて宿へ戻る。
「パパとセリアママとユキナママお疲れ様。やったね!」
普段、人がいる場所では精霊界に消えてしまうため出てこないシルフィが気持ち良さそうに村を飛び回っていた。
ゲリラダンジョンの出現は村人にとって大迷惑な事故だったが、シルフィにとっては特別な日になったのかもしれない。
「わあ! パパ、お店ガラ空き。今ならなんでも盗み放題だね?」
「盗まねーよ……」
真顔でこんなことを言うのだから、見た目は子供のようでもやはり子供ではないんだな。
「でも、ママのハートはしっかり盗んでるよね!」
「誰が上手いこと言えと……って、セリアはともかくユキナは違うだろ」
セリアは勇者アルスに助けられた経験から俺を好きになってしまったと聞いているが、ユキナとは利害が一致してパーティを組んでいるに過ぎない。
シルフィが単にママと呼ぶとどちらかわからなくて困る。
「えー、でもユキナママとも手繋いでる!」
「勘違いするな。これは疲労回復のために密着させて付与魔法をかけた方が効率が良いからやってるのであってだな」
「でも、ユキナママの顔赤いよ?」
「ん、確かにそうだな」
改めてユキナの顔を確認すると、確かに頬が少し赤くなっていた。
「熱があるのか? 体調が悪そうなら——」
「大丈夫。大丈夫だから!」
「そ、そうか。なら良いんだが」
このように、今の素っ気ない対応からもユキナは俺のことをなんとも思っていないことがはっきりわかる。
「アルスって鈍感ですよね」
「ん、どこがだ?」
「そういうところです」
……はて?
どうやら、俺以外の三人は意味がわかるようだが、俺にはよくわからなかった。
確かに、はっきりと言ってくれないとなかなか察するのは難しいところはあるが、みんな等しくそんなものだろう?
まあ、そんなことはともかく。
因縁があったゲリラダンジョンの攻略を一人の犠牲者も出さず成功したことには、俺にとって一つ次のステージに進んだ感覚がある。
改めて確認しておこう。
俺の野望は、魔王を倒して魔素の発生を止めること。それにより平和を取り戻すことだ。
今回は村にも人にも犠牲は出なかったが、村人たちは不安を感じながら避難を強いられた。ゲリラダンジョン攻略のため集まった勇気ある冒険者たちも、命を賭ける必要はなかった。
たまたま俺たちがいる村に発生したから良かったものの、戦力に乏しい村で発生すればとんでもない被害になった可能性もある。
こんなことは二度とあってはならない。
このパーティなら、いずれ野望を叶えられるはずだ。
とはいえ、当面の課題はセリアとユキナの更なる強化。それと、俺自身も強くなる必要がある。
まあ、するべきことをしていれば結果は後からついてくる。着々と前を目指すとしよう。
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これにて第二章完結です!
星評価は最新話をお読みいただくとできるようです。
第三章もお楽しみに!
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