追放された付与魔法使いの成り上がり 〜勇者パーティを陰から支えていたと知らなかったので戻って来い?【剣聖】と【賢者】の美少女たちに囲まれて幸せなので戻りません〜
第22話:付与魔法使いは精霊の森に行く
第22話:付与魔法使いは精霊の森に行く
「最強の素材か……。必要なら手に入れたいが、どこに行けば採れるもんなんだ?」
移動だけでも何十日とかかるような離れた場所となれば、それだけ武器の出来上がりも遅くなってしまう。
名工ガイルの最高の武器が手に入るのであれば時間をかける価値はあるのだが、場合によっては生活費を稼ぐために並行してギルドからの依頼もこなす必要があるかもしれない。
「場所はここからそう遠くないんじゃ。ベルガルム森林の奥地——通称『精霊の森』と呼ばれる場所なのじゃ」
『精霊の森』……行ったことはないが、噂では聞いたことがある。
ベルガルム村を出て南西に下った場所に位置するベルガルム森林。そこにある少し変わった一角だ。
魔物が強いわりには経験値効率が悪いために勇者パーティ時代は寄り付かなかった。
経験値は魔物の個体の強さに概ね比例することが知られているが、魔物の強さの割に経験値量が少ないことには理由がある。
この地には精霊——火・水・地・風・聖・闇の六大属性を統べる精霊が住んでおり、その精霊の魔力に当てられて強化されていると言われているのだ。
精霊の持つ魔力と魔物が持つ魔力は性質が違い、魔物が精霊の魔力を吸収することはできない。
その個体独自の恒久的なものでなければ個体の強さとしては成立しないため、強さに比例した経験値を得ることができないのだ。
「なるほど……それで、何を採ってくればいいんだ?」
「1kg以上の精霊石じゃ」
「せ、精霊石か……!」
精霊石というのは、精霊魔力の塊である。
魔物は精霊の魔力を吸収することはできない。
しかし、吸収されずに残った精霊魔力は体内に堆積し、やがて手のひらサイズの石になってしまう。
こうしてできた精霊魔力の塊——それが精霊石だ。
どの魔物も少なからず精霊石を堆積しているはずだが、1kgの精霊石はなかなか採れない。
精霊石に宿る魔力量の多さ——すなわち堆積した精霊魔力の量により重さが決まる。
普通は100グラムほどのものしか取れないということを考えると、大型の強力な魔物を倒さざるを得ないようだ。
しかもそれを二個ともなれば、かなり大変な素材集めになる。
稀に魔物が死んだ後、奇跡的にその場に残った精霊石が冒険者に拾われ、高値で売られることがある。
しかし、そんな貴重鉱石を買えるほど財布に余裕があるわけではないし、時間もかけてはいられない。
「わかった……。なんとかしよう」
「さすがはワシが見込んだ男じゃ! 健闘を祈るぞ」
これにて一旦話はまとまり、俺とセリアはガイルの工房を後にした。
なかなかとんでもないことになってしまったな……。
どの程度の強さの魔物を倒せば1kg以上の精霊石を手に入れることができるのか想像もつかないが、まずは行って確かめてみる他あるまい。
「セリア、早速行こうと思うんだが、準備はいいな?」
「はい、いつでも大丈夫です」
「よし、じゃあこのまま村を出て森を目指すぞ」
俺たちは工房を出たその足で精霊の森へと向かったのだった。
◇
一時間ほどかけて精霊の森に到着した。
精霊の森の名に相応しい幻想的な光景が広がるこの狩場では、魔鳥から虫型の魔物まで幅広く生息している。
——ザンッ! ザンッ! ザンッ!
ひとまずセリアが適当に魔物を狩り、俺が精霊石を回収するというスタイルで十分ほど続けてみたのだが——
「どうですか?」
「ダメだな」
この間で採れた精霊石は20個ほど。
俺は魔物から採れた精霊石の中で最も重いものを手のひらに乗せてセリアに見せる。
「一番重いものでも300グラムくらい。目的のものとは程遠いな」
膨大な量の精霊魔力を溜め込む魔物となると、強力な魔物に限られる。
やはりその辺をうろついているような雑魚では集まらないようだ。
どの程度の強さの魔物を倒せば1kg以上の精霊石が採れるのか基準がわからなかったのでとりあえず倒してみたのだが、強い魔物を倒すことよりも、強い魔物を探す方が難易度は高そうだ。
精霊の森は半径約10キロほど。
この範囲に生息する魔物で強い魔物となると、存在するのかどうかすら怪しい。
「どうするかな……」
俺は、頭を抱えた。
「強い魔物が向こうから来てくれるといいんですけどね。……あっ、それもちょっと困りますけど」
「そうだな。……いや、その手があるか」
なにも、必ずこちらから無理に探し出す必要はないのだ。
魔物は大気中に存在する魔素を喰らって生きる個体、魔素を吸収した草を喰らって生きる個体、魔物を喰らって生きる個体の三種類がある。
基本的には魔物を喰らう肉食の魔物の方が強い傾向にあるので、強い魔物が食べたがりそうな絶妙な量の魔力を餌として発散し、引き寄せればいい」
「少し危ないが、やってみるか。注意してて見張っててくれ」
俺はセリアにそう伝えた後、早速作戦に取り掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます