第10話 (10) 思春期の女の子、本人次第

(10) 思春期の女の子、本人次第


健太郎、飲み会が終り、駅へ向かう。9時前。【今から帰れば、菜月と夕食、食えるかな?おかずあったかな?】

亜紀と駅で偶然に会う。

「おう、健太郎~、お帰り~。飲みの帰り?」亜紀、明るい笑顔。

「あ~、そうだ。亜紀もか?」健太郎、赤ら顔。

「うん、打合せの後、食事。奢って貰っちゃった。経費で落ちるからって、、、、、、ねえ、健太郎、時間ある?」

「あ?、、時間?、、、無くは無いが、何だ。」

「うん、、、、これからの事。健太郎との事と菜っちゃんの事。」健太郎を見据えていた目をそらして亜紀が言った。

「判った、、、おいおいに考えるじゃなく、今か?」

「うん。もう決めてたから、、、あの時は、決めた事、話せなかったから、、、」

「やっぱりな。お前らしいや。」健太郎、あきれ顔の笑顔で少しイヤミ。

シアトルコーヒーへ入る。

「で、どうしたいんだ?」

「うん、、、健太郎とは結婚できない。今は、、、」

「今は?、、、いずれは俺と結婚するってか?」

「ううん、菜っちゃん次第なんだけどね、、、健太郎を奪い合う事になると思うの、いずれ、、、。その時、健太郎に決めて貰おうかと思って、

 今、私と健太郎が一緒になると、菜っちゃんが傷付く。深く、深く、、、だから、、、」

「あ~、奪い合う?俺が決める?何言ってんだ、お前は、、、。菜月が独り立ち出来たら、俺は菜月を追い出すぞ。間違いなく追い出す。

 あいつはあいつで生きて行く事が必要なんだ。」

「でも、菜っちゃんは健太郎の事、好きだよ。応えてあげないの?」

「ああ、応えない。手は出さない、、、母親とも約束した。」

「菜っちゃんのお母さんに会ったの?、、、約束したんだ、、、」

「今度、お父さんにも会おうと思ってる。いつかはわからないが。」

「そう、、、と言う事は、菜っちゃんが出て行ったら、私と?」

「……勝手なやつだな、お前は。昔っからそうだったけどさっ。そうするとは限らない。」

「え、、、、、、そうだよね、、、私、勝手に出て行っちゃったんだもんね、、、嫌だよね。」

「お前と一緒になっても、いつ一人になるか分かんねえし、お前、いつも勝手に決めるし、、、、でも、、、」

「……でも、、、何?」

「まだ、好きだからさ、、、諦め切れねえからさ、、、結婚しないけど、一緒には暮らさないけど、見ていたいしさ、、、」

「……健太郎、、、何か支離滅裂。私もだけどね、、、ねえ、暫くは菜っちゃんの事だけにしようか。」

「そうだな、今日は酔っ払ってるし、まだ纏まって無いし、、、やっぱり、おいおいにしよう。」

「うん、そうしよう。帰ろう。」


翌日は菜月の作ったハンバーグで夕食。調理に亜紀は殆ど手を出さなかった。随分と上手くなった。

「……うん、美味い、、、ん?何か隠し味が、、、あっ、お出汁だ、、、出汁醤油かぁ~、、、」健太郎、唸る。

「……ホントっ!美味しい、、、凄い!なっちゃん。」亜紀も称賛。

「そ、そうかぁ、、、うん、良かった、、、褒めてくれた、、、嬉しい、、、」菜月が笑顔になる。

食べ終わった後、菜月が言った。

「健太郎と亜紀さん、結婚すればぁ~、、、なんか見ててジレったくてさあ、、、仲良しする時は、オレが亜紀さんちに行くし、、、」

「へぇっ!、、、なっちゃん、、、健太郎の事、、、良いの?」亜紀、菜月からの予想外の発言に驚く。【だって、いずれ争うつもりだったのに、、、】

「良いよ。おじさんの事、好きだけどさぁ、抱いて欲しいとかじゃないし、結婚なんてオレじゃ無理だし、、、、でもさ、、まだいっぱい教えて欲しい事あるし、

 オレ、追い出される様に亜紀さんちに行くと何もしなくなるかもしんないから、ここに置いといて欲しいんだよねぇ、、駄目かな?」

「……ほれ、見ろぉ~、亜紀。やっぱり、お前の早とちりじゃねえかっ!。」と健太郎。と同時にうすら笑い。ホッとしたのか、菜月の大人になった様な考えに嬉しくなったのか良く分からない。

亜紀の上目使いと、小さく結んだ口、少し赤くなった頬。思い込みだった恥ずかしさと健太郎とまた、仲良くできる嬉しさ、菜月の心遣いも嬉しい。それらがごちゃ混ぜの心。

数日後、健太郎が「菜月っ。ちょっと亜紀のとこ、行ってくる。帰りは明日の朝。」と告げる。「行ってらっしゃい。」と菜月。

健太郎が亜紀の家へ通う様になった。


菜月のうんちドリルは、順調に進んでいった。各学年の総復習が一カ月で一学年進む。

来月から、中学校に移る。しかし、困った問題があった。中学生向けうんちドリルが無い。仕方ない、絵の多そうな問題集を買う。

これは亜紀に選んで貰った。菜月と一緒に本屋で見ながら決めた。亜紀は強力な家庭教師だ。


【亜紀に帰って来て貰って、ホントに良かった。菜月にとっても、俺にとっても、、、】


亜紀と言う強力な理解者が出来た菜月は明るく素直になった。元々そういう子なんだと思う。

ただ、思春期の女の子だ。男にはわからない事もある。亜紀は早合点が多い、多すぎる。思い込みも激しい。

そうだ。社長なら、思春期を無事に過ぎた(だろうと思う)娘さんがいる。気をつけた方が良い事を聞こう。

「社長、ちょっと良いですか?。帰り、お聞きしたい事が有って、、、」

「良いわよ、6時頃からなら。」


「ペットさんは元気?上手くいってる?」近くのシアトルコーヒー。

「はあ、まあ、なんとか、、、ってか、、、わかってました?えっ、、、何処まで?」見抜かれていると思った健太郎。

「何が?分かって無いわよ、何も、、、はは~ん、、、やっぱり女だったのね?」カマを掛けていた水城。

「実は、、、17の女の子と同居してまして、これから何をしてやれば良いかなって思った時、そういえば社長の所に娘さん居たなぁ~って思って。」

「えっ、17歳?。犯罪じゃないの?それって。大丈夫?、捕まったりしない?…手、着けちゃったの?・・・巨乳の次はJK?」

「手、着けてないですよ。そういう関係じゃないですよ。それに、亜紀が戻ってきたし、、、今度は一緒になろうとしてますし、、、」

「あ、そう、戻ってきたの。良かったわね。……で、その同居人、17の娘さんの何が心配なの?恋愛?進学?」

「それ以前の人付き合いと言うか、世間との関わりと言うか、友人とか、、、、、、実は親御さんとは色々有って、学校も満足に行ってなくて、、、」

「えっ、、、どういう事?良かったら聞かせてよ。そのいきさつとか、今の事とか。」

健太郎は同居し始めた経緯と菜月の父母の事、同居してからの家の事、勉強の事、亜紀の家庭教師の事などを話した。

「へえ~、、そんな子もいるんだね、、、でも素直な良い子みたいじゃない。」

「社長のところの娘さん、17歳の頃に、社長ってどういう所に気をつけておられました?」

「何も気をつけていなかったわよ。高校生になったら自己責任だからねって言ってたし、妊娠とかしたら、そりゃ付き添ってあげるからねとは言ったわね。」

「あ、そうか、、、娘さんに最初に会われた時、言われたんでしたっけ。責任は果たしてねって。」

「うん、言っておいた。女の子はほら、思春期からはもう大人で一個人だから、、、甘えたい時は甘えても良いけど、そんなの自分の都合のいい時だけだから。」

「と言う事は、本人がしたい事をさせれば良いんでしょうかねぇ~。ただ、学校行ってないんで、、、」

「じゃ、学校へ行かせてあげれば。アルバイトとかさせても良いんじゃない?社会と関わりも出来るわよ。」

「学校か、、、高校か、、、何処か有るかな、、、」

「今ねぇ、通信とか自由に行って良いキャンパスとか有るみたいよ。娘の時、選択肢の一つとして考えたわ。悪くは無いみたい。本人次第よ、結局。」

「あ~、、通信制か、リモートとかもあるのかな、、調べてみます。ありがとうございます。やっぱり、社長は俺の師匠です。一生着いて行きます。」

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