第2話 (2)風呂に入れ。それからだ。

(2)風呂に入れ。それからだ。


「手なら1万、口なら2万、まんこなら3万でどうだ?」

「…………はあ~?、、、、、、、、、」


「お前、何言ってんだ?、、、何の事だ?、、、まさか、男相手に春、売ってんのか?」

呆れたが、すぐに苛立ちが怒りに変わってきた。誰に対しての怒りだ?

「……どうすんだっ?するのかしないのか、どっちだ!」女は怖い目で睨んでいる。

さっきまで吸っていた煙草が火が消えていたことに気付き、ポケット灰皿へとしまう。


女が持っていた煙草も、ポケット灰皿を差し出すと女はそれにいれた。


”す~、、、は~、、、”健太郎は深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。


【春を売るってたって、この見た目じゃ無理だろう。汚ねえし、、、

 あ、こいつ臭えや、、、風呂入ってねえな、、、

 こんなんじゃ、病気持ちに思われるぞ。ってか病気持ってるかも知んねえし、、、

 お前、そうやって生きてきたのか?、、、男のちんちんしゃぶって来たのか?、、、マンコも貸してたのか?何時からだ?

 親は何、してんだ!、、、こいつ19じゃねえだろ、、、中身、、幾つだ?本当は何歳だ?

 誰か居なかったのかよ!、、、役所は何してんだ?、、、役所も知らないのか?手が出せねえのか?

 おい!、お前っ!そんな事しちゃダメだっ!直ぐに止めろっ!】

階段を昇って行くように、健太郎は怒りとか情けなさが混じった様な感情が湧いてきた。


「早く決めろよっ!、、、面倒臭え~なぁ~。」

”す~、、、は~、、、”もう一度、健太郎は深呼吸した。女の体臭が鼻を突いた。【く、臭え、、】

「お前、俺んちに来い。風呂に入れ。それからだ。考えるのは。」自分でもやけに落ち着いた喋り方だなと思った。

「あっ?、、、ちょ、ちょっと、、、ちょっと待て、、一晩中なら、3万じゃダメだ、、、5万、いや 10万だ。」

急に怖気づいた様な女。眼が泳ぎだす。

「うん、そうだな、、、お金は渡す。だから、取り合えず風呂に入れ。頼むから、、、」湧いた怒りを誤魔化したかったのかと思う、健太郎。

「……う~、、、、、、、、、分かった。ついてく。」目が泳いでいる。考えている様で、どうしたらいいのか分からないかもしれない。気は小さいのか?……良く分からない。

「よしっ!じゃもう一回コンビニへ行こう。さっきのゴミも捨てて、もう少し食べる物、買おう。まだお腹、空いてんだろ?」

「ああ、食い足りねえ。もうちょっと欲しい、何か。」女は笑った。歯が黄色い。

女、ベンチの下からポシェットを引っ張り出し、先ほどの煙草を数本とジーパンからライターを取り、中に入れた。

【……このまま置いて帰ったら、誰かにさっきと同じ事を言うかと思ったら、、、やるせない、、、イヤだ、、、え~いっ!どうにでもなれっ!】

健太郎、どうするか頭の中の整理は出来ていない。

【風呂に入らせ、綺麗になったところで一発やるか?、、、いや、、、出来そうにもねぇな、、、どうするよ、健太郎。】


もう一度コンビニに入る。

牛丼や焼き肉弁当、スパゲッティや鳥の唐揚げ弁当、うどんやラーメン。数本の飲み物。歯ブラシセット。を購入。

コンビニ袋が二つ。健太郎が受け取り、店を出てマンションまでを歩き出した。

「一つ、持つよ。」女が後ろから声を掛けてきた。

「おう、そうか、、じゃこっち持って。」健太郎が軽い方を渡す。

受け取る時、女が恥ずかしそうにしている。俯き加減に健太郎に手を出し、目はチラチラと健太郎を見ている。

健太郎が微笑み返し、構わず歩き始める。

マンションに着いた。エントランスにあるオートロック解除を自宅の鍵を差し込み、自動ドアを開ける。

エレベーターに乗る。女の体臭が狭い空間に漂う。3階で降り、一番奥へと向かう。

健太郎の部屋に入る。電気を点ける。健太郎がスリッパを女に履くようにマットの上に置く。

一番奥のリビングダイニングへと進み、電気を点けテーブルの上に買ってきた物を置く。

ここまで、健太郎のする一連の仕草を見ていた女が突然、

「すげぇ~、、、マンションってこうなってるのか~。初めて見た。」

「えっ?、、、マンション、初めて?、、、あっそう。」

女はキョロキョロしながら、自分の持っていた袋をテーブルに置いた。

「ソファーに座ってて。お風呂入れてくるから、、、」

健太郎が廊下の途中にあるドアの一つを開け、入っていく。洗面所とお風呂があるドア。

暫くすると戻って来た。かと思うと、廊下の向かい側の部屋に入る。

プラスチックの衣装ケースを運んで来た。

リビングに置くと蓋を開け、中から服などを出して来た。

「パンツはこれ、ブラはこれ。新品だから安心しな。Tシャツとトレーナーだ。大き目だから大丈夫だろう。」

「これ、誰んだ?おじさんのか?」

「ああ、俺のだ。……ハハ、っな訳、ねえだろ!。この間まで一緒に住んでいたヤツのだ。」


「先に風呂入るか?何か食べるか?」女に尋ねた。

「どっちでも良い、、、」女、どうして良いかわからない様子。

「じゃ、先風呂行って来い。髪もちゃんと洗えよ。出来れば一回、歯を磨いておけ。寝る前にもう一回磨け。」

そう言って、テーブルにある袋から歯ブラシセットを出し、女に渡す。

「……うん。じゃ、、、」女が、渡して貰った服と下着、歯ブラシセットを持ってバスルームへと向かう。

「おお、脱いだもの、そこの籠に中へ入れておけ。良いな!」

「うん、、、」女は少し振り向き、頷く。


【持ち帰りしたのは良いが、どうするかなあ~これから。今夜は泊っても良いが明日からどうするかなあ~

 なんか、イヤらしい気分じゃねえしなあ~、子供みたいだしなぁ~、、、小遣いやって明日、追い出すか?】

健太郎はソファーに座りながら、買って来ていたビールを飲みながら天井を見上げ考えていた。

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