きったねぇ~ホームレス女に親切にしたら、人生が楽しくなった。

やまとやじろべえ

第1話 (1)ホームレスは女の子

(1)ホームレスは女の子


「手なら1万、口なら2万、まんこなら3万でどうだ?」

「…………はあ~?、、、、、、、、、」


須藤 健太郎 41歳.。 マンション販売の東亜開発㈱に転職し、12年目。

金曜日の夜、翌日からの新築マンション完成見学即売会の準備の為、夜の9時過ぎにようやく帰路に就いた。

代々木上原駅から徒歩10分の所に自宅のマンションがある。途中のコンビニに寄り、ビールとやきそば、カップめんを購入。

のどの渇きを癒そうと、近くの公園に立ち寄り、ベンチに座る。ビールの栓を開け、一口二口と飲む。コンビニ袋をベンチの真ん中あたりに置く。

煙草に火を点ける。この公園は禁煙だが、夜も遅い。「ごめんなさ~い」と呟きながら、街灯に向けて白い煙を吐く。

飲んだビールのせいか、お腹が張ってきた。下っ腹にグッと力を入れ、勢いよく、屁をこく。

”ブっウオっ!”……「うっお~、、、すっきりしたぁ~」

ベンチの下から、”ゴソっ”と音がした。何やら動いた。段ボール?、、、、、確かに動いている。

次の瞬間、「てめぇ~!、きったねぇ~へをこきやがってっ!。折角、人が寝てるのによぉ!」とベンチの下から声がした。

【あっ?、女?、、、】ハスキーボイスだが、確かに女の声。若い声に聞こえた。

ガサゴソと段ボールが開き、そこから長袖Tシャツとジーパンの女がゆっくりと出てきて、ベンチの背もたれの後ろに立った。

「す、すみません、、、どなたかいらっしゃるとは思いませんでしたので、、、ども、、、、」健太郎、顔だけ後ろを向き、一先ず、謝っとく。

その女は、ベンチの後ろから前に回り、コンビニの袋を挟んでベンチの健太郎の反対側に座る。

「はぁ~、、、寝てたのによぉ、寝れなくなったじゃねぇかよぉ~、、、」と言いながら、地肌のあたりは黒くなった髪と白髪交じりの、金髪に染めた頭を掻く。

良く見れば、白だったと思われる長袖Tシャツ。何かのシミがあちこちまだらに着いたジーパン。足はクロックス風の黒いサンダル、男物?

「よ~、煙草、一本くれっ」と言って左手を出してきたので、煙草の蓋を開け、その口を相手に向けた。

女は差し出された煙草を4、5本を一度に取った。その内一本を咥え、「火、、、、火だよ。火、くれっ」と要求した。

仕方なく、ライターをポケットから取り出し、火を点けてやると、「貸せっ!良いから貸せっ!」と横柄に言う。

【面倒くせぇ~奴だなぁ~、、、】「ほいっ」とライターを渡す。女は火を点けるとジーパンのポケットに仕舞う。「おいっ」思わず口に出た。

「ふぅ~、、、」一息、二息吸うと、ベンチの真ん中に置いてあるコンビニ袋を凝視し始めた。

【ん?腹減ってんのか?、、、食べたいのか?】

「腹、減ってんだったら、やきそば食って良いよ」と言ってやると、顔を上げちょっと笑って「良いのか?悪ィなっ」袋からやきそばと箸を取り出す。

女は咥え煙草で、焼きそばのフィルムを無造作に外すと、地面へポイと投げ捨てる。蓋も同じように投げ捨てる。

「ゴミはゴミ箱へ捨てましょう。って習わなかったか?」呆れたように健太郎が言うと、

煙草の火をベンチに転がし、火種だけを落としながら、「習ってねぇ、、、、習うほど行ってねぇ、、、」と焼きそばを見ながら聞こえるかどうかぐらいの声で女が答えた。吸い掛けの煙草はベンチに置く。

「ん?、、、行ってない?、、、」【どういう事?、、、】理解が追い付かない健太郎。

女は割箸の入った袋を持ち、それを自分の膝辺りへ突き刺す様に叩き付け、箸を取り出す。もちろん、箸の袋も投げ捨てる。

貪る様に焼きそばを食べる女。箸の持ち方が変だ。揃えて持つように小指側から食べる側が出ている。突き刺しながら食べているようにも見える。

【ジャングルの野生児か?、、、猿にでも育てられたか?、、、】食べている女を見ながら、妙な苛立ちが湧いてきた。

【どういう育ち方したんだ?、、どこで?、、親は?、、学校は?、、家は?、、仕事は?、、歳は?】

女が食べ終わった。やっぱり、箸と容器が投げ捨てられた。

健太郎はベンチから立ち上がり、今捨てられた容器と箸、先ほどのフィルムを中に入れ蓋を被せて、取り合えず手に持ちベンチに座り直す。

「お前、、、、歳は幾つだ?」ちょっと語気きつめで健太郎が問う。

「19だ。」ベンチに置いていた吸い掛けの煙草に再び火をつけながら女が答える。ライターはもちろん、ポケットへ収まる。

【19?、、、パッと見は30?、、、よく見ると 15,6か?、、、判らん。】

「仕事は?何やってんだ?」

「何でも良いだろうっ!いちいち詮索すんじゃねえ~!。」少し切れ気味。

「焼きそば、奢ってやったのに、、、可愛くねえなあ~。」半ば笑いながら健太郎は反応を見ようと、女を覗き込む。

「ワリィ、、、ありがと、、、仕事はしてねえ、、、出来ねえ、、オレ、何も出来ねえ、、、どうして良いか分かんねえ、、、」

”ハッ”と何かに気付いた様な顔になり、急に大人しくなった。落ち込んでいる様に見えた。困ってる様にも見えた。

健太郎が何も返せないで黙っていると、女はゴクリと生唾を飲み込み、意を決したように健太郎を上目遣いで見た。そして、、、


「手なら1万、口なら2万、まんこなら3万でどうだ?」

「…………はあ~?、、、、、、、、、」

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