第8話

酒をやめてから感じたこと


10/1緊急事態宣言が解禁され、テレビでは飲食店で酒を飲む人たちが映し出されていた。

「うまいですね〜」などと酔いしれている。

久々のうれしいニュースだ。


私も35年間、酩酊感を味わうのが好きだった。

依存性ではなかったが、もしかしたら一歩手前だったかもしれない。

何より身体が悲鳴を上げていた。


止めるのが不安だった。慣れ親しんだ酩酊感がない生活とは一体どんなものなのか…。

しかし一旦酒を止めてみると、日にちが経つにつれ、「身体が正常な働きを取り戻している」ことがよくわかった。


⚫︎よく寝れる

⚫︎よく寝たので、声がよく出る

⚫︎むだな脂肪が減ってくるので自然と痩せる

⚫︎思考が妄想に行きにくくなり、スッキリと物事を考えられるようになった


身体にとって酒は毒以外の何物でもないから、一旦体内にアルコールが入ると、肝機能がその分解に何時間も働くといわれている。それの影響で、身体全体に負担がかかったり誤作動することは想像にかたくない。


太宰治や無頼派や中原中也の生活は、酒か女か執筆か、だっただろう。チャーリーパーカーなど昔のジャズミュージシャンは、ドラッグか酒か女か音楽か、だっただろう。

しかしそういう生活が許され、かつ成立するのは、ごく一部の天才だけだと思う。

芸術家は自らの身を滅ぼす中で、創造の光明というものをつかむ。命と引き換えにして後世に偉業を遺す。

それが自分にも当てはまると思ったわけではないが、そういう美学に惹かれていた自分は、なんとも稚拙で愚かだった。私はそれに気づくのに、なんと35年もかかってしまった。


コロナは恐ろしいが、コロナ禍という状況が私に教えてくれたことがある。

「酒を飲まないでもやっていけるということ」

緊急事態が解禁したからといって後戻りはしない。前進あるのみ。


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