第20話:第一章 16 | 跳び出した先で ③
「── 水色と白のストライプ……」
「……
今日一度やったやり取りを繰り返す。
流石に飛び蹴りまでは再現しなかったが、その変わり僕の顔に弱めのデコピンをしてきた。
よく見れぱ表情もだいぶ違う。
部屋の時の睨めつけるような視線とは変わって、その目からは柔らかい感情が見て取れた。
下敷きにされてる僕には抵抗のしようがないし、このくらいの威力であれば普段なら全然ウェルカムなのだが、今はそうも言ってられない。
何よりなんかこの状況は色々と恥ずかしいのでやめてほしい。
「……あのマコトさん、退いてもらっていいですか」
「あ、ごめん、ありがと。……あんたよくマーカー持ってたわね」
マコトはそう言うと僕の上から腰を退かした。
どうにか上手くいって良かった、実は僕も無理かもしれないと思っていたから。
なぜなら。
「いや、実は持ってないんだよね、マーカー」
「──え? どういう意味……あれ? どこいったの、さっきまで……」
僕の言葉を受けて、マコトは足下のマーカーを探す。
しかし見当たらない、当然だ。
本当にマーカーなんて持ってなかったのだから。
「ちょっと見てろよ、今1つ作るから」
僕はそう言って2人の足下の地面の色を変更した。
そしてさっきまであったのと同じように、記憶の中のマーカーを色で再現する。
奥行きも、光源の当たり具合も完璧だ。
ただ色を塗ってあるだけなのに、本当に目の前にあるかのように見せる。
うん、我ながら完璧な出来映えだと思う、さっきの壁の時もそうだけど頑張ったな僕。
「…うそ」
「
それを見て驚いたマコトが、短く声を漏らした。
僕もそれに同じように返す。
「つまりお前はマーカーがあると認識さえすれば跳べるって事だ。
「
正直そっちも賭けではあったが、僕の方も同じくらいダメ元のようなものだった。
壁の色を変えて状況を再現するといっても、あそこまで精密に多色の色を変えた経験は無かった。
それに幾ら精密な画面を造っても所詮それは本物ではない。
実物を見なければ跳べないというルールが強固なものだったら上手くいかなかっただろう。
けど試した価値は十分にあった。
おかげで、これからこのゲームを巻き返す事ができるかもしれない。
「マコト、時間がない。協力してくれ、
「分かった。……でも、
「いや、この左手のおかげで迷宮内の事が分かるんだ。だからあいつが今どこを走ってるのかも、もう一つの宝石がどこにあるかも知ってる」
その言葉に、マコトは納得したような顔をした。
詳しく左手の説明をした方が良いかと思ったが、必要ないようだ。
ここに転送される直前のケイナの言葉が聞こえていたのか…?
「もう1つの宝石、今レンが持ってるみたいなんだ。それを守りながら活州と応戦してるっぽい」
「じゃあ清光の宝石を狙うにしても、もう一方の宝石を狙うにしても、結局は同じ場所に辿り着くって事なのね」
マコトを脱出させようとしてる間の話だ。
僕が宝石を手にした場所と似た空間にレンが入り、そこで何かを手にしたのが伝わってきた。
そして、その後に活州と鉢合わせ、以降戦闘に入っているのも分かっている。
清光が活州と合流しようとしている以上、活州と応戦してるレンとも同じ場所に集まる形となる筈だ。
「そうだ。清光の宝石を奪い取るか、清光と活州が合流するよりも先に、僕達がレンと合流できれば勝ちだ! 急ごう」
そう言って、僕は地面に左手を置き現状を探る。
清光が活州と合流するまであと1~2分程掛かるようだ。
どうやらレンと活州が戦闘をしながら移動している事で、清光は当初よりも合流に時間が掛かっているらしい。
そして奇妙な事に
これならまだギリギリ間に合うかもしれない。
僕はマコトにこれからの作戦を伝えると、彼女は少し動揺したようだったが、頷きを返した。
これも賭けだ、出来るかどうかは五分五分だろう。
でもやれるだけやるしかない。
「──よし行くぞ。このゲームに勝って学園に帰ろう」
僕がそう言うと、直後にマコトの願能の感覚が全身を包んだ。
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