第14話:第一章 10 | 選定試練・0《セレクトゲーム・ラブ》①
再び。
真禅学園中等部 屋上 非常用貯水タンク裏。
マコトに連れ帰られたレンの姿に驚愕する。
どこもかしこもボロボロで、どうにか生きている、そんな印象を受ける程の重体だった。
「──嘘だろこんなの、レンッ…!!」
「
ケイナはそう言うと、僕とマコトを脇にやりながらレンのとなりに膝を着いた。
そして傷付いたレンの腹部に手をやる。
そのまま目を閉じて、ゆっくりとその口を開いた。
「──癒しの力を持つ女神よ、貴女のその
彼女がそう言った直後、レンの腹部にかざした手が淡く、柔らかな光を発し始めた。
そのまま10秒、20秒と時間が過ぎる。
2分ほど経ったかという頃合いでケイナがその手を退かすと、レンの腹部にあった穴は塞がれて、痛々しかった傷は跡形も無くなっていた。
さっきまで土気色だった顔にも血色が戻っている。
素人目でも、命の危機は脱したように見えた。
──良かった、本当に。良かった……
「……理事長、傷の手当てができるんですか?」
「
なるほど、ある程度の力を振るえるようになると言っていたのはそういう事か。
どういう理屈かは知らないが、今回は『癒しの力を持つ女神』様の力を借り受けたらしい。
ていうか神様でも既読無視とかするんだ……
「よし、しばらくすれば目を覚ますだろう。マコトさん、西門の様子はどうだったかな? 彼女はまだ?」
「……
屋上の扉を見やりながら言うマコトの表情は少し緊張している風だった。
僕も不安だ。
確かに今この瞬間にも、そこから清光達が現れるかもしれない。
「──これからどうします?」
「
マコトの問いかけに、ケイナは得意気に返した。
万全の状態で安全に? そんなの本当にできるのだろうか……
「向こうは僕を殺しに掛かってるのに、安全になんて無理じゃないか?」
「
言われて保健室での記憶を辿る。
そういえば清光は、確か───
「清光 明良はあくまで君の左手だけを狙ってたろう? むしろそれ意外は傷付けまいとしていたフシがある。想定してたよりもだいぶ優しいし、交渉の余地はあるさ」
「
うつむきながらそう言うと、ケイナは座る僕の頭に手を置いて、グイッと無理矢理に上を向かせた。
そのまま月明かりを背後に置いて、優しく口元をほころばせる。
「そこはこの頼れる私! 真弾学園理事長にして、リアル神様の一柱にして、ハニ君の未来の連れ合いであるところの私に任せてくれたまえ!!」
「……
何か適当な軽口で混ぜっ返そうかと思ったが、彼女の言葉の真意が僕を安心させる為のモノなのだと悟って、歯切れ悪く、かっこ悪くお礼を返した。
最後の肝心な一言なんて本当に小声で、ケイナに届いたかも怪しかったけれど。
「……学園に付いてから
ケイナは中等部のグラウンドを指で示しながらそう言って、再び得意気な表情を作った。
「───今から彼等に、
◇
◇
◇
ケイナが言う
文字通り、
新学期から始まるカリキュラムにも含まれているらしい。
その試練の中で定められた課題に対して
どう向き合うのか、向き合わないのか。
どう対応するのか、受け流すのか。
どう解決するのか、投げ出すのか。
それを見定める事で、試練を受けた者の、神様になる資質を計るのだという。
いくつかの形式があるものの、その中の一つに明確な勝敗を決めるものもあるのだという。
そしてその試練を受ける際には必ず誓いを立てなければならず。
敗北した者は、その誓いを生涯掛けて守る事が義務付けられる。
そしてそれを破る事は、この世界と神が許さない。
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