第8話 ヨーロッパ一人旅(夏編) 前編


 お待たせしました。 少し引っ張りすぎたようです。気合を入れなおし、本題に入ります。

 今回はテーマを5つに絞りました。


1.ドイツのメルヘン街道。小学生のときに読んだ童話の絵本の世界に浸ってみよう。21年前のデンマーク・オデンセのアンデルセンが思い出されます。


2.ギリシアのエーゲ海。海の美しさと小さな島々。白亜の建造物。


3.イタリア。“ナポリを見てから死ね!”は本当か? 芸術の都。イメージではないですがガラにもなく。水の都。ローマの休日、再び。


4.アルプス・ハイキング。 21年前、スキーで滑った山を今度は自前の足で歩いてみよう。


5.海外初マラソン。何てったって、憧れのヨーロッパ・アルプス山岳マラソンです。出発前から胸が躍ります。日本人がよく参加するホノルルマラソン、ニューヨークマラソン、シカゴマラソン、ボストンマラソンには殆ど興味はありません。


 フランクフルト空港に到着してから、自分の英会話の不調に驚きました。日本では殆ど英語を話す事はありませんが、教育テレビでリスニングはやってたので大丈夫と思っていたのですが、鉄道の券売機の操作法を尋ねたもののリスニングができなくて、やむを得ず窓口で購入しましたが先が思いやられます。

 もたもたしながらフランクフルト中央駅近くのホテルに落ち着きました。切符の購入方法が分からなければお話になりませんので、駅に戻って落ち着いてインフォーメーションで訊いたあと、自分で何度も操作してはキャンセルしてどうにかマスターしましたが、後ろで待っていた韓国のヤングに気付かず、かなりイライラさせたようです。

 メルヘン街道には1週間の滞在です。ブレーメンまで一気に行って、帰りにそれぞれの童話のゆかりの地を訪ねる予定が番線を間違え、即予定変更で手前から攻めることにしました。

 アルスフレッドは赤頭巾ちゃんの町。途中の車窓からの風景は、赤頭巾が病気のおばあさんを訪ねた田園のムードがあり童心に還ります。ホテルに落ち着いた後、田園を散策してみました。小川の静かな流れが心地よく安らぎを感じました。

 カッセルにはグリム兄弟博物館があります。子供の頃読んだ絵本ではメルヘンチックですが原作は残酷描写が多いんですね。童話なのに意外ですよね。

 博物館は公園内にありジョギングコースもあります。1周5kmを3周してみました。翌月末の山岳マラソンを意識しての事です。

 ハーメルンはねずみ捕り男一色。町全体がねずみ捕り男野外博物館みたいでした。鳥取県・境港のゲゲゲの鬼太郎みたいです。日本でのタイトルは確か“ハーメルンの笛吹き男”ですよね。

 ブレーメンは時間がなく諦めました。“ブレーメンの音楽隊”は野根の親戚宅で絵本で読んだ記憶があります。

 私は童話作家としてはアンデルセンのほうが好きですが、記憶が遠い精か(グリム兄弟は小学時代)、作品はグリム兄弟のほうに興味がありますね。


 エーゲ海の玄関口はアテネ。真夜中にアテネ国際空港からバスで中心街のシンタグマ広場に着いたのが2時。ホテルにチェックインしたのは3時でした。ここでは一晩中車の騒音が聞こえていました。

 エーゲ海はミコノス島、サントリーニ島に絞っていたのですが私ならではの大失敗を1つやっちゃいました。タイムスケジュールを確認さえしておけば何でもないことですがこの呑気な性格が災いし、経過時間からミコノス島と信じて下船した島はティノス島と言う別の島でしたが、なんとなんと丸2日近くも気がつかずにずっとミコノス島と信じて過ごしました。海外でここまで自分が間抜けと思ったのは初めてですね。顔なじみになったレストランの兄ちゃんにビーチへの行き方を尋ねたら、そのビーチはミコノス島にありこの島ではないと言うんですね。かっこ悪さで顔が火を噴きました。

 結局、サントリーニ島はやめにしてこのティノス島とミコノス島の2島にしました。日本では無名の島ティノス島では山を走ってみました。殆ど雨の降ることのないこの島は、土がカラカラに乾いていて走っても車が通っても埃だらけ。でもそれなりに気分よく走れました。

 ミコノス島はさすがに噂どおり白亜の建物は美しく路地は複雑。宿の近くの高台から見た夕陽がきれいでした。注目のヌーディストビーチにも行ってみました。  ずっと以前に見た洋画の影響かみんながオールヌードで浜辺を歩き回っているのかと心配(期待?)していましたが、ほとんどがビーチチェアーで日光浴していました。オールヌードのトドのような体型をした中高齢者は1か所にまとまっており、若い人たちは水着の人が殆どで、30代後半以上の女性の3人に1人ぐらいが上は脱いでいました。

 海水は冷たく10分が限度です。1度シュノーケリングにも挑戦してみましたが、海岸から600mぐらいの場所で魚もいなく冷たく期待はずれでした。

 話は代わりますが、ギリシアでは庶民的食堂の事を“タベルナ”と言います。食堂でタベルナ(食べるな!)とはこれいかに?

 アテネに戻ってアクロポリスの丘に登ってみました。日曜日で無料開放の精か人出が多くあまり楽しめませんでした。ギリシア随一の観光名所ですが、古代遺跡に関しては、私の場合頭の中で想像を巡らしているときは良いのですが、現場に行くとあまり感動しません。

 でもアテネの後訪れたオリンピア遺跡は感動しました。古代オリンピック発祥の地で、陸上競技好きには避けては通れません。競技場の192mの直線走路を全力で走ってみました。34秒かかりました。背中の荷物がなければもう少し速いんですけど。


 ギリシアからは船でイタリア入り。この船が驚いたことに日本製でドアーや壁に日本語が見られました。元々日本で使用していたのかな? 多分そうですね。

 先生、“ナポリを見てから死ね!”は嘘ですね。街は塵だらけ。サンタルチアも歩いてみましたが私にはイマイチ。

 ただ、ヴェスーヴィオ火山とポンペイは値打ちがありました。ポンペイでは4時間かけじっくりと観て回りましたが、1300年前に亡くなったそのままの遺体との対面はなんと言ったらいいのか・・・言葉が出ません。

 有名なカプリ島の青の洞窟にも行ってみました。ソレントから乗船したんですが、またしても乗船賃をごまかされたようです。出発時刻が迫っていたんで乗船賃を確認しなかったのが悪かったんですが。私には“Fifty thousands” と聞こえたんです。この時は全く気付かずカプリ島に下船後船賃を見ると、ソレントまで15000リラと書かれていました。買ったのは往復乗船券で、よく見ると30000リラでした。カプリ島から青の洞窟までのボート代も込みかなとも思いましたが別でした。

 窓口でのやりとりをレヴューしてみました。奴は“Fifty thousands”と言った。 まだイタリア紙幣に不慣れな私は初めに出したのは10万リラ札かと思ったら1万リラ札だった。 次いで出したのは5万リラ札だったんでこれで払った。この時、奴は妙なことを言った。初めに手にした1万リラ札を両替すると言って5千リラ札2枚と交換した。これは私の注意を逸らすためのトリックだったのではないか。

 カプリ島ではずっとこの事が気になっていましたがあとの祭。奴は30000リラしか受け取っていないと言うに決まっている こいつは日本人と見るやこの手を使っているのではないだろうか。日本人は料金を確認しない事が多いので。

 青の洞窟は神秘的で、小学生時代に読んだ“宝島”の世界に迷い込んだような錯覚に陥りました。洞窟に居たのがわずか5分程だったのが残念。20分ぐらいは居たかった。


 ローマは2度目ですがローマと言えば“ローマの休日”で、再びスペイン階段、トレビの泉、真実の口、コロッセオ・・・を訪れました。残念だったのはコロッセオが有料になっており、競技場に橋がかけられていて内部が見られるメリットの反面、情緒がなくなりました。伝統のある町並みに電信柱が情緒を失わせるのと同じ理屈です。 

 今回は映画の中でグレゴリー・ペック演じる新聞記者のブラッドリーが住んでいた安アパートや、オードリー・ヘプバーン演じるアン王女がタバコをふかした喫茶店にも行ってみました。こちらは良かった。


 ガラにもなくフィレンツェで有名美術館に入ってみました。ルーブルの時と同様、小中学時代に教科書で見た作品や予めガイドブックで注目していた作品には見入ります。価値あるものを観たと言う心地よさは残りますが、相変わらずその本当の価値は分かりません。


 水の都・ベネティア。船は地元民と観光客でいつも満杯でした。宿は、窓の外はビルの壁で監獄みたいな部屋でもけっこう高いですね。路地裏をてくてくと歩いてみましたが細い路地ばかりで息が詰まりそう。

 タンザニアのザンジバル島やエーゲ海のミコノス島を思い出します。小さな観光の島だとこうなりますか!


 翌日、オーストリア・インスブルック行きの列車内でまたまたちょっとしたトラブル。乗車券購入窓口ではいつもどおりのワンパターン英語で購入するんですが、一部相手の質問が聞き取れませんでした。しかしティケットを渡されたのでいつもどおりVISAカードで支払いを済ませ乗車し、ほどなく指定席に着席したところまではノープロブレム。

 ところが数時間後、乗務員がチェックにきたんですが、暫くティケットを眺めたあと血相を変えて食ってかかってきました。イタリア語かドイツ語で印刷されていたんでよく分からなかったんですが、どうやら私が買ったのは指定席のみだったようです。安かったんでおかしいと思ったんですけど、海外ではドルを除いて金銭価値が麻痺しておりダメですね。

 ドキュメントを知りたいんでパスポートを見せてくれと言うんで見せると、私を日本人だと確認して急に態度が穏やかになりました。中国人か韓国人に不正乗車する輩が多いのでしょうか。彼は笑顔で去って行きました。えっ??? 

 VIZAカードしか持ってないと話しておいたので、準備をしてやって来るだろうと待っていたら別の乗務員がやって来たんですが、彼もまた何もしないで去って行きました。手続きが面倒なんでしょうか?

 インスブルック駅で相談しようかとも思ったんですが、国境を越えると尚更面倒になるのかと、結局そのままフリーパスしてしまいました。ソレントのつり銭詐欺を5倍ぐらいにして取り返したことになりますが、しばらくは後味の悪さが残りました。



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