第3話 アメリカ一人旅 前編
floccinaucinihilipilification.
今日はApril Fool. それは無視して...
先生、お元気でしょうか。先日の日曜日に愛知県新城市で32キロの山岳トレールに参加し、えらい目にあいました。両内股は攣り、初めて脱水症状を経験しました。脚が攣ったときには、たまたま前泊の宿で一緒だった男子が追いついてきて雪塩と水をいただき、脱水症状のときには初対面の親切な女性にハイドレーションのドリンクをいただきピンチを乗り切ることができました。
それまで6時間前半のペースだったのが7時間33分も費やしてのゴールでした。それにしてもスタート前は年代別入賞だったのが、脚を攣ってからは時間内完走になり、脱水症状のときにはただただ生還と目標がだんだん落ちていくのは、我ながら実に情けない。何はともあれ無事帰って来ました。
さて、ヨーロッパから帰国後、希望通り大阪に転勤になりました。神戸大で図書館の雑誌受け入れ業務システム化のチームリーダーをやっているとき、同僚に誘われテニスにチャレンジすることになりました。やってみるとなかなか面白く、ラケットも購入して本気になり、スタミナをつけるためアパート近くの武庫川河川敷でジョギングをしてみました。
片道2キロを超スローで休憩を挟んで一往復しました。まさかまさかでこれがその後超ウルトラマラソン(100キロ超のウルトラマラソン)にチャレンジするきっかけになろうとは、当時思いもしませんでした。
2キロ、5キロ、10キロと距離が伸びてゆきスピードもアップしてくると力試しをしたくなるのが土佐の男。甲浦中学時代はバスケット部、海南高校時代は陸上部だった5歳下の弟が大阪府枚方市に住んでおり、彼を誘って10キロのロードレースに出場しました。弟には100メートル余り遅れましたが45分12秒で完走でき、大いなる自信を得ることができました。
昭和59年9月、私35歳の秋でした。
半年後にはハーフマラソンを、1時間42分24秒で完走し、旅、スキーに登山から、テニスにマラソンとスポーツばかり趣味が5つに増えました。札幌のときもそうでしたが、仕事と趣味が両立しているときは人生が充実していますね。私にはまだまだ青春真っ盛りでした。
ところが、花の盛りは短いもの。お人好しの社長が詐欺に引っ掛かったのを端に会社が買収され、ずさんな経営で大きく傾いてしまいました。ある日東京から社長が来阪し、現状を知らされ社長より一足早く私も退職することにしました。
NHKドラマ“大草原の小さな家”の父さんの言葉を思い出します。“大きな損害の代償として、小さな利益が必ずある”。すぐにアメリカの旅が決まりました。
昭和60年5月12日、ロサンゼルスに向かって伊丹国際空港を発ちました。
これに先立って数週間前、以前カナダのバンフで世話になった日本人の友達がカナダ人の新妻と共に、新婚旅行で10年ぶりに帰国し神戸で7年ぶりに再会しました。私はアメリカの前にバンフに寄る予定で、彼らと日程を確認しあうと私のほうがずっと早くバンフに到着するようでした。先に行って彼らのマンションを勝手に使用することになりました。
海外一人旅も3度目ともなるとスキルも身に付き格安でハワイ、韓国にストップオーバーできる大韓航空を選びました。まだまだ自信のない英会話ですがロスの空港に到着した瞬間に英語モードになるから不思議ですね。安くあげるためにロス経由でバンクーバーに行きましたがロスでの余計な一泊を考えればあまり効果はなかったようです。
またまた発音の悪さで早速、苦笑するしかないことがありました。バンクーバー空港からカナダ国有鉄道のバンクーバー駅に行くバスの運転手に、”Are you going to Vancouver CNR?” と尋ね、確認してから乗車したのは良かったのですが途中でここだと言って降ろされました。
終点ではなかったのかと何の疑問ももたずに降車し駅を探したが見つかりません。何度も行ったり来たりしてどうやら謎が解けました。近くに“Sea Bus”の看板が見えました。CNRのCを強調し過ぎたのがいけなかったようです。30分ほど歩いてバンクーバー駅に到着。
バンクーバーからバンフまでの車窓からの景観は気に入っています。アメリカ杉の森や渓谷がいかにもカナダらしい。7年ぶりのバンフは懐かしく過去とオーバーラップさせながら1人であちこち歩いてみました。日本人にも5人再会しましたがみんな昔のまま。二児の母親になってる女性が少し老けたかな?
月末に家主が新婚旅行から帰って来ました。その1週間後バンフを離れ、いよいよアメリカに発ちます。このアメリカの旅では、テーマははっきりしていました。
1.国立公園を訪ね、偉大なる大自然を体感する。
2.古き良き時代の大西部の名残を体感する。
3.TVドラマ“大草原の小さな家”の舞台を訪ねる。
国立公園は5ヵ所訪れました。
1. ヨセミテ国立公園
2. セコイア国立公園
3. イェローストーン国立公園
4. グランドティートン国立公園
5. グランドキャニオン国立公園
最初に訪れたのはヨセミテで、渓谷を散策の後、1時間の登山で上に登れます。 観光バスで来ているグループが大勢いました。日本からのツァー客も多く、年配の男性が何か買っていましたが、レジの女性の”Do you have a quarter?” が理解できず困ってたのでミニ通訳をしてあげたんですが、何ら私に謝意をしめすこともなく仲間どうしで会話を交わしてました。田舎の農協さんの慰安旅行かな?
セコイアは圧巻でした。地球上最大の植物であるジャイアントセコイアの巨木の森の中を歩いていると、まるで自分が巨人の国に迷い込んだガリバーになったようで、大感動を覚えました。幹周り32mはすごいですよね。
先日訪れた奄美大島は珊瑚礁が隆起してできた島で石灰岩が多く、高橋尚子の座右の銘のように下へ下へと根を伸ばすことはできず、樹木は横へ横へと根を広げていますが、このジャイアントセコイアは、土壌との関係は分かりませんが横に大きく根を広げています。”Dead Giant”と名づけられた巨大な倒木の根を見ると一目瞭然でした。
10年ほど前にTVで知りましたが、イェローストーンはかって人間の敵ということで狼が全滅させられましたが、その結果鹿が増えすぎ生態系に支障をきたし、今度は狼を移入してバランスをとってるようです。
奄美大島や沖縄本島ではハブを駆除するため外来種のマングースを島に持ち込みましたが、マングースの糞からは島の固有種であるヤンバルクイナ、アマミノクロウサギ、トゲネズミ、ケナガネズミといった貴重な種の羽や毛が発見され、ハブの痕跡は殆どないようです。マングースの餌の対象が何かを考えれば誰でも分かりそうな初歩的な大失敗ですね。
イェローストーンには硫黄温泉が湧いています。旅の途中で出会った日本人が言ってました。日本ならすぐ温泉施設を造るだろなって。温泉入浴は大好きですが、基本的に私は自然は自然のまま利用するアメリカ方式に賛同します。
アメリカ方式に賛同と言えば、こんなこともありました。全然危険とは感じなかったのですが、柵を乗り越えて写真を撮ってたら、歩道に戻ってからバスの運転手に注意をうけました。そうして”That’s a general rule.”と繰り返されました。
身軽で危険性を感じてなかった私は言葉が出ず、相手の真剣な眼差しにただ頷いただけでした。後で考えてみました。歩道に戻ってから注意してくれたのは何故か?
たまたま気付いたのが歩道に戻った後だったのか?
柵の外に居た時に声をかけると危険との判断か?
この日本人に気に入った写真を撮らせてあげようと、敢えて歩道に戻るまで声を掛けなかったのか?
最後のだとアメリカ的ですね。
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