第59話 最悪の結果


望月に襲われてから一週間が経っていた。一郎さんに中々言えない。今もリビングで一緒にテレビを見ている。今日は一郎さんが泊って行く日だ。


「星世どうしたの。ここ一週間元気ないけど」

「ごめんなさい。授業の件で悩んでいて」

「授業か、星世の授業俺分からないからな。でも話すだけで少しは気分がスッキリするんじゃないか。聞くよ」

「ありがとう。でもいい。自分で解決する」

「それなら良いけど。無理しないでね。俺いつも星世の側にいるから」

「ありがとう」


彼に寄りかかった。ごめんなさい。言う勇気がない。もし言ってこの関係が崩れたらと思うととても言えない。


「そう言えば、立花とお姉さんそろそろ渡米するんじゃないか。送りにいかなくていいの」

「いい」

「そうか。星世が良いと言うならそれでいいよ」


彼女は、俺と付き合う前は、立花しか見えていなかった。でも俺と付き合い始め、ご両親にも認められてから、今度は立花と会う事を拒絶するようになった。


 分からない。やはり聞いておいた方がいいんだろうか。でも彼女から話す事をしない限り聞かない方が良い感じがする。なにか中途半端な内容じゃ無い感じだ。でもなぁ……。



それから更に二ヶ月が経った頃、


 今日は、一郎さんが来る日、夕食を一緒に食べる事にしている。私はスーパーで買い物してマンションに帰ってスーパーの袋から総菜を取り出そうとした時だった。


「うっ、気持ち悪い。ううーっ…………」

シンクに顔を向けて収まるのを我慢していると


「ううっ、お腹の中に何か違和感がある。まさか!」



でもあれから、丁度二か月半が過ぎた。あの時の事は結局一郎さんには言わず仕舞いだった。でもこれがもしそうだったら。


 あの時、万一を考えてアフターピルを飲んでおけば。大丈夫と思っていたのに。

急いでドラッグストアに行って妊娠確認キットを買った。


マンションに戻って試すと

「プラス!どうしよう。堕胎するしかない。でも一人じゃ。実家に帰って。とんでもない。不味い、不味い、不味いよう」


ダイニングテーブルの椅子に座って気持ち悪さと戦いながら考え込んでしまった。


ピンポーン。

えっ、もう六時半。早く開けないと。


ガチャ。

「星世、お邪魔しまーす。美味しそうなワイン買って来たよ。

 えっ、どうしたの。顔が血の気無いけど」


一郎さんの顔を見たら何も考えられず抱き着いた。

「ど、どうしたの」

「ごめんなさい。ごめんなさい」


星世が泣きながら謝っている。どうしたんだろう。

「とにかく中に入らせて」

「う、うん」


ドアを閉めると一郎さんがダイニングに行った。ワインを置く為だろう。


あっ、いけない。


俺はダイニングテーブルにスーパーのレジ袋と一緒に無造作に置かれている箱と取り出された試薬キットを見て、血の気が引いた。俺だってそれが何を意味するか分かる。


「星世、これって。もしかして妊娠したの?」

彼女は頷くだけだった。


「避妊はしっかりしていたけど。失敗したのかな。俺の子供だよね?」


彼女が膝を崩して泣き始めた。まさか。でも浮気なんてする子じゃない。

「どうしたの。泣いてばかりじゃ分からないよ」


それでも俺の足元で泣いている。仕方なく、俺もダイニングの床に座って泣き止むのを待った。

十分位して、顔を上げた。目が真っ赤になっている。


「ごめんなさい。本当は…………」


星世の口から出た事が信じられなかった。

「ほんとうなの?」


彼女が頷いている。また、俺の顔を見ると

「一郎さん、どうしよう」




俺は、翌日附属病院にいるという望月葵陵に会う事にした。もちろん星世を連れて。

病院の案内で望月を呼んで貰う。少し経ってから男が現れた。


「星世。こいつが望月か」

彼女は頷いた。


「如月さん、どうしたんですか。それにそちらの方は」

白衣を付けて涼しい顔をして聞いて来ている。


「望月さん、ここで話も良いが、あなたの立場をとても悪くする内容だ。表に出ないか」

「俺の立場を悪くする内容。何を言っているんだね」


「星世さんがお前に会いに来た意味が分からないはずがないだろう」

「何を言ってるのか分かりませんが」


「白を切るのか。はっきり言ってやる。婦女暴行、性行為強要。そして相手を妊娠させた。疑うならお前のDNAと星世のお腹にいる子のDNAを調べるか。もちろん犯罪者として警察に届け出る。証拠は十分すぎるからな」


「なにー!」


何なんだ。あれから二ヶ月半も経っている。一度遊んだだけじゃないか。あの時、この女が暴れるから強引にしてやった。その後は大人しくなったが、確かに付けなかった。たったの一回だぞ。

 とにかく、こんな人の多いところでは不味い。


「と、とにかく外に出ようか」


望月を連れて外に出た。

「何を望んでいるんだ。当然堕胎するんだろうな。金なら全部俺が出してやる。お前の子供として片付ければいいだろう」


ズカッ。ボクッ。


気が付いた時、俺は望月の腹を蹴って、下がって来た顔に斜め上から拳骨を食らわした。

望月の膝が崩れ落ちる。

「暴行罪で訴えるぞ」

「訴えて見ろよ」


望月が腹を抱えながら立ち上がると

「如月さん、何を望んでいるんだ。金か」

「いえ、あなたの子供として堕胎の書類に署名して下さい。そして私と一緒に病院に行って下さい。ここでもいいですよ」

「ふざけるな」


「では、私の実家の病院にしましょう」

「なに?!どう言う意味だ」

「意味は有りません。誰にもばれずにしっかり処置して貰えます。警察に行くよりいいでしょう。あなたも来てください。もちろん慰謝料は請求しますよ」



「お前はいいのか」

「俺は、星世さんのお腹からお前のゴミを取って欲しいだけだ。彼女は俺の妻となる人だ」

「一郎さん」

私は、この時、何も考えずにただ一郎さんに堪らなく心が引き寄せられた。



星世さんは、その日の内に実家の病院に電話した。ご両親は当然のことだが、驚き怒っていた。とにかく帰って来いと言う父親の言葉に三人で行く事にした。


 翌日、俺達三人は如月病院に向かった。研修中に二日も休みを取るのは厳しいが仕方ない。


―――――


とんでもない話になってきましたが、星世さん良く金田君に話しました。

金田君、あんた偉いよ。


でも簡単には行かないんですよね。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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