第58話 予定外の出来事
ゴールデンウィークでの如月病院跡継ぎ騒動で今交際している星世さんが、将来如月病院の医院長になる事、俺と星世さんの結婚も視野に入れたお付き合いを星世さんのご両親から許された事で、最近は星世さんと結構密な関係になっている。
気分的には上々だ。立花と過去何が有ったから知らないが、今の俺達にそんな事はもう関係ない事だ。過去を見ても何も生産性は無い。
そんな星世さんとの付き合いの中で就職した大手IT企業の箱崎での研修も半ばの六月。俺は大和研究所に行くことになった。見学を兼ねた社内ツアーだ。
電車で現地の駅集合それからバスという流れだ。大和の駅に着くと見知った顔の女性が立っていた。
「柏木さん」
その女性はこちらを振返ると
「金田君、お久しぶり。どうしたの、こんな所で」
「就職した企業の研究施設がここに有って、その見学を兼ねた研修です」
「えっ、金田君もこの会社に」
「まさか、柏木さんも。でも入社式の時いなかったですよね」
「いましたよ。人数多いから分からなかったのでしょう」
「そうですか。ところで柏木さんも大和研究所へ見学ですか」
「はい、営業第二本部から来ています」
「本当ですか。俺は技術第一本部からです」
話をしている内に研究所からのシャトルバスが来て話が途切れた。
いずれここで働くのかと思うと結構真剣に見聞きしたおかげで、あっという間に見学は終わり、会議室で質疑応答の後、食堂で昼食になった。当然柏木さんと一緒だ。
お互いトレイに定食を乗せてテーブルに着くと
「久しぶりですよね。柏木さん」
「本当、二年までの基礎科目の授業で何回か会ったきりですね。あれから何か変わった事とか有りました」
星世さんとの事言ってもいいものか。でも付き合っている事は本当だし。将来も約束されているからな。
「俺、付き合っている人がいるんです。大学に入った最初の頃は柏木さんに声かけていたんですけど、全然相手にされていないので諦めていた所に、ちょっとしたきっかけで出会ったんです。如月星世さんと言って今医学部の三年生です」
「えっ、如月星世!金田君、星世と付き合っているの」
「はい。柏木さん星世さん知っているんですか」
「如月星世は同じ高校。あの子訳有って一年遅れて入って来たけど」
金田君が声を掛けてくれた時は、まだ立花君しか見てなかったから仕方ないや。
「柏木さんは、誰かいるの」
「うん、居たけど、卒業と同時に自然解消かな。彼地元に帰るらしくて。おかげで今フリーよ」
「そうなのか。でも柏木さんなら引手数多でしょう」
「そうでもないよ。どうも大学名で引っ掛かってしまって。相手が引いてしまうの」
「そうなんだ。でもこの会社ならそんな事無いんじゃない」
「社内恋愛は止めておく。上手く行かない時面倒だから。ねえ、連絡先交換しようか」
「いいですよ。同じ会社ですからね」
いつの間にか食事も時間も終わり、他の同僚と一緒に箱崎に戻る事になった。
でも、さっき柏木さん、訳有って星世さんが一年遅れて入って来たと言っていたけど、何が有ったんだろうか。聞いてみるかな。でも過去の事。今知っても意味はないか。
如月星世の参加しているサークルにて
一郎さんとの交際を両親に認めて貰ってから彼と一緒に居る事が多い。彼のアパートだったり、私のマンションだったり。
前と違って気持ちが安定しているのが分かる。一郎さんとお付き合いして良かった。いずれ私の夫になる人。私が大学を卒業した時、結婚することになっている。
彼、婿入りだけど嫌な顔しないし、向こうの両親も了承してくれた。まだ、三年有るけどやっぱり嬉しい。
「如月さん、なにニヤニヤしているの」
「えっ、そんな事無いですよ」
「ねえ、これ終わった後、皆で近くの居酒屋に行くけど、如月さんも行こうよ。あなたが来ると男子の参加率高くなるから」
「えっ、嘘でしょう。私なんか居ても」
「それ、自慢にしか聞こえないから。行きましょう」
今日は、一郎さんと会う約束無いしいいかな。
「良いですよ」
「本当。皆、この後の件、如月さん参加するって」
「「「「俺、僕…。参加しまーす」」」」
「ほら言った通りでしょう」
「…………」
彼いるんだけど。
サークルも終わり、駅近くの居酒屋に入った。
「俺、如月さんの隣に座ります」
「いや、いや、僕でしょう」
「お前ら、先輩が優先だろう」
「いや、こればかりは、先輩、後輩無しです」
「皆だめよ。如月さんの隣は私達。でも前なら良いわよ」
「よし、じゃんけんだ」
飲み始めの喧騒も落ち着き、皆で話をして三十分経った時だった。
「俺も入れてくれないか」
「望月先輩じゃないですか。どうしたんですか。こんな所に」
「いや、ちょっとな。大学に用事が有って、その帰り、喉が渇いたからと寄ってみたらお前たちがいたから、声掛けたんだ」
「そうですか。どうぞ、どうぞ」
美鈴の知合いの繋がりで如月妹がどのサークルに入っているのか聞き出した。そして今日飲み会が有る事も。飲み会が始まって直ぐに参加は緊張させるだけだと思い三十分位経ってから参加した。案の定結構飲んでいる。
望月先輩が目の前に来た。ちょっと嫌な感じ。
「如月さんだっけ。お姉さんそっくりだね」
「え、ええ。姉の事知っているんですか」
「一年しか違わないからな。何かと話したよ」
ここは適当にしておくか。
「そうですか」
一方的に話をしていた。仕方なく私は相槌を打ちながら、お酒を飲んでしまった。水にすればよかった。だいぶ効いている。
「皆、そろそろお開きにするよ。割り勘ね」
私は、自分の分を払うと
「ごめん、おトイレ。皆先に帰っていて」
「大丈夫」
「平気」
全然平気じゃない。少し気持ち悪い。おトイレで落ち着かせよう。
十分位してお店を出ると入り口に望月さんが立っていた。
「如月さん、大丈夫ですか」
「大丈夫です」
下手に絡まれない様に一人で歩きだすと少しふらついた。
「ほら、ふらついているじゃないですか。これじゃ、歩けないですよ。タクシーで送りますよ」
「大丈夫です」
強い力で腕を掴まれた。離れる事が出来ない。あっ、タクシーが止まった。
「さっ、如月さん。乗って」
「で、でも」
「いいから」
私はタクシーの中で寝てしまったようだ。気が付くと知らない天井。ベッドの上に寝かされている。望月が上半身裸でベッドに座っている。
「えっ、ここは」
「とても帰れなさそうだったので休もうと思って入りました」
「でも、これ」
下着しか着けてない。
いきなり口を塞がれた。
力の差で抵抗のしようがなかった。酷いよ。
………………………。
マンションに着いたのは午前一時を過ぎていた。
急いでお風呂に入ると熱いシャワーを思い切り浴びた。頭から足の先まで全て洗った。悲しくて涙が出て来た。
何故、高校の時も。神様意地悪過ぎるよ。何故私だけがこんな目に合うの。
お風呂から出るとベッドに横になった。今日は大学へは行かない。これからの事考えないと。
でもどうしよう。嫌がったから強引にされて付けて無かったし。大丈夫かな。危険な時じゃないけど。一郎さんには…………。どうしよう。
もうあの時の二の舞はしない。一郎さんにはっきり言うしかない。でも嫌われたら。
大丈夫、話さない方が良くない。でも……。
―――――
あーあ、とうとう望月の奴。決まった人がいながら。
星世、可哀想すぎる。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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